第143話 20年前の話

 20年前、虎石たちのパーティーは世界最強だった。

 当時、誰もクリアできなかったレベル50のダンジョンをクリアした。


 最強剣士の虎石、武器を何でも使いこなせる怪力の金剛寺、そして天才魔法使いの武者小路ナオコのパーティーだ。


「武者小路ナオコさん……お婆さんのお孫さん……ですね?」

 花子から聞いていたアキラは老婆に尋ねる。


「ああ、そうじゃ。古い冒険者だからな。今の若者で知ってるやつは少ないじゃろ。

 ナオコはダンジョンで事故に遭い、行方不明になった」


 金剛寺は俯く。


「……事になっとるんじゃ」

 老婆が続けた。


「……は? お、おい!? ということだ」

「こ、金剛寺! 落ち着け!」

 老婆に掴みかかる金剛寺を抑える虎石。


「し、しかし……どういうことですか?」

 虎石も動揺を隠せない。


「虎石、金剛寺。本当にすまんかったな……

 行方不明になったことにしてほしいと言ったのは、ナオコ自身なんじゃ」


「どういうことだよっ!?」


 ◇


 世界最強パーティーとなった彼ら。

 ナオコはさらに高みを目指すため、トレーニングも兼ねてソロでの冒険もしていた。


 ナオコは冒険中、突然ダンジョンに現れた黒い影に襲われた。

 目を覚ますと辺り一面草原の世界にいた。


 黒い影は異世界の神の使いと名乗った。


 人間界とは全く別の次元に存在する異世界。

 ダンジョンはその異世界の一部だ。


 ダンジョンはモンスターの成長や資源の確保など、異世界にとって重要な役割を担っていた。

 しかし、そのダンジョンが長年の老朽化により崩壊の危機を迎えていた。


 異世界の神はあらゆる手を尽くしたが、ダンジョンの崩壊は止められなかった。

 崩壊を防ぐには、別の世界の大きなエネルギーが必要だった。

 つまり、人間界のエネルギーだ。


 異世界の神は、強力なエネルギーを持つ人間を探すため、人間界にダンジョンを作った。

 それが今から30年前のことだ。


 そして20年前、いよいよ神が待ち望んだ、強力なエネルギーを持つ冒険者、武者小路ナオコが現れた。


 ◇


「人間界にダンジョンができた理由は……異世界の神が強力な人間を探すため!?」


「し、信じられねェ……ナオコが異世界の神に……!?」


「そうじゃ……ナオコは天才魔法使いじゃった。

 あの頃のナオコは冒険者としての資質なら虎石や金剛寺よりも上だったと思っとるよ」


「ああ……たしかにそうだったな……」


「虎石さんや店長よりも……!?」

 そんな冒険者がいたことにアキラたちは驚いた。


「それで……ダンジョン崩壊を防ぐために、異世界の神に選ばれたナオコさんはどうなったんですか……?」


 老婆は話を続けた。






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