第131話 花子の休日2
「なるほど……」
それから花子は『武者小路ナオコ』のことを調べた。
古いダンジョン雑誌の情報によると、最強パーティーの天才魔法使いということだった。
その彼女だが、ある時を境にパッタリと情報が途絶えている。
「うーん……亡くなったのかな? 病気か、それともダンジョンでの事故か……」
高レベルダンジョンでの、死亡事故は珍しくない。
最強パーティーの冒険なら当然高レベルだろう。
ダンジョンが現れてすぐの頃は、回復魔法や回復アイテムも今ほど充実していなかった。
「仲間がダンジョンで亡くなったのから……店長は話したくないって言うことかしら?」
花子がもう一つ気になっていたのは、老婆が言っていた、昔レベル100のダンジョンに行った冒険者がいたと言う話だ。
話を聞いたところ虎石でも金剛寺でも老婆でもなさそうだ。
「もしかして……この武者小路ナオコさんがレベル100に……? まぁそうとも限らないか。昔も強い冒険者はたくさんいたでしょうしね……」
気になる花子は家を飛び出した。
アキラとまどかに連絡するも、電話は通じない。
2人ともダンジョンに入っているようだ。
◇
花子は1人、錬成師の老婆の家を訪ねる。
前にアキラの車で送ったことがあるので、家は知っていた。
「はぁはぁ……いきなり来ちゃったけど、大丈夫かしら……」
古い木造住宅の武者小路家。
花子がインターホンを押そうとした。その時、
「ホッホッホ。何か用かい?」
窓から老婆が顔を出す。
「お、お婆さん……! すみません。急に……」
◇
「で、今日は何のようだい? まだレベル90のダンジョンをクリアしていないんじゃないかのぅ?」
老婆とはレベル90のダンジョンをクリアしたら、20年前の冒険者の話を聞かせてくれると言う約束だ。
「はい……レベル90のクリアはもうそろそろです」
「ホッホッホ、それは頼もしいねぇ」
外国にしか見つかっていないレベル90のダンジョンを、クリアできそうといっても驚かない老婆。
何も言わないが、アキラの部屋のダンジョンのことはお見通しなのだろう。
「あの……お婆さん……」
「ちょっと待っておくれ。お茶でも淹れよう」
台所に立つ老婆。
花子は1人待つ間、仏壇を眺めていた。
無意識のうちに武者小路ナオコの写真がないかを探してしまう花子。
「……ナオコの遺影はないぞ?」
「えっ!?」
花子の心を見透かしたかのように老婆はつぶやいた。
「あの、武者小路ナオコさんはお孫さんですか?」
花子は切り込む。
「……そうじゃ」
「やっぱり……あの……もしかして、レベル100のダンジョンに行ったことがある冒険者って……」
「……それより先はレベル90をクリアしたらじゃ。
レベル100で戦える冒険者にしかこの話はしないつもりじゃ。
虎石にも金剛寺にも、誰にも話していない」
老婆は真剣な眼差しだ。
「……お婆さん! 1週間後、アキラさんの部屋に来てもらえますか?
レベル90をクリアします!
できれば虎石さんや金剛寺さんも一緒に」
「……わかったぞぃ。いよいよこの時が来たか。
ナオコも待っているはずだ」
「ナ、ナオコさんも……?」
どういうことだ? ナオコさんは生きている? 戸惑う花子。
「ホッホッホ、じゃあ1週間後、期待しておるぞ」
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