第113話 店長の過去

「それにしても、やっぱり店長も伝説の冒険者だったんですね!」

「けっ、伝説なんてもんじゃねェよ!」

 店長は不機嫌になる。なぜか前から店長は、自分の昔話の時には機嫌が悪くなるのだった。


「……でも、すごいですよ。よかったら今度俺たちと冒険に行きましょう! アドバイスくださいよ」

「あー……まあ気が向いたらな……」

 店長は相変わらず気の抜けた返事をする。


「あの……店長?」

「ん? なんだ、魔女っ子?」

「ウチにあった古いダンジョン雑誌に、店長の昔の写真があったので持ってきました……」

 花子は古い雑誌の切り抜きを取り出した。

 冒険者が写った記念写真のようだ。


「ばっ、ばか野郎! 変なもん持ってくんじゃねェよ!!」

 店長は顔を赤くする。


「え? どれが店長さんですか!?」

 まどかも興味津々だ。

 雑誌の切り抜きには数名の冒険者たちが写っている。


「……あっ、これ虎石さんか!? あっ! こっちには老人剣士が……この時もすでに老人だな……」

 おそらく20年ほど前に撮られた写真だろう。

 今では伝説とされる冒険者たちの若かりし頃の姿。


「えーっと……ん? 店長写ってないなぁ……」

「ええ……店長さんはいませんわね……」

 アキラとまどかは店長を探すが見つからない。どこにも髭モジャの男はいないのだ。


「ふふふ、甘いわね。2人とも! 店長はコレです!」

 花子は写真の1人の青年を指差す。

 整った顔立ちの細っそりとした美青年だ。


「……は? な、何言ってるんだ、花子さん? そんな訳……」

 アキラは写真と店長を交互に見る。


「……あっ! に、似てるかも!?」

「う、うるせェな! なんだよ似てるって。見るんじゃねえよ!」

 顔を真っ赤にし怒り出す店長。


「店長、イケメンだったんですね!」

「だったんですね、じゃねェだろ! ばかやろう!」


「でも、この写真のメンバーすごいですわね……私でも知ってる冒険者が何人かいますわ……

 あれ? 店長さん、この女性はどなたですか?」

 まどかは店長の横に立つ、1人の女性を指差す。


「……ああ、そいつはパーティーの仲間だよ……」

 店長はぶっきらぼうに返事をする。


「へぇー、綺麗な人ですね! 店長、好きだったんじゃないですか!?」

「……うるせェッ!!」

 突然、怒鳴り出す店長。

 いつも大声でしゃべり、怒ってばかりの店長だが、今回の怒りは本気だとアキラたちは分かった。


「す、すみません……」

 マズイ、何か聞かれたくないことだったんだ……3人は凍りついた。


「!! す、すまん。怒鳴ったりして……

 ほ、ほら……急にこんな昔の写真見られたら恥ずかしだろうがっ!

 ったくよ、もっとカッコよく撮れてる写真は無かったのか? バカ野郎め!」


 つい怒鳴ってしまった店長。わざとおちゃらけて空気を良くしようとしてるのが、アキラたちにはすぐに分かった。


「い、いえ……すみません。急に色々聞いて」


「あぁ? 気にすんな!

 いつか昔話でもしてやるよ。まあその時は金を取るけどな! ガッハッハ」


「ははは……楽しみにしてますよ」

 また無理に冗談を言っている店長だった。


 調子に乗りすぎたな。人には聞かれたく話の1つや2つあるんだろう。アキラはそう思い反省した。




★★★★★★★★★

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