第114話 錬成師

 そんな気まずいアキラたちのもとに『錬成師』はやってきた。

 錬成師は店長の言う通りおばあさん、それもおそらく100歳近い見た目だ。


「おう、婆さんよく来てくれたな!

 こいつらが強化石で錬成をして欲しいみてェでな!」


「は、はじめまして……今日はお願いします」

 アキラたちは頭を下げる。


「あい……よろしく……」

 無愛想に返事をする老婆。


「おいお前ら、この婆さんはなぁダンジョンのことなら何でも知ってるぜ。いろいろ聞いてみるといい。

 若い頃はなかなかの冒険者だったんだ」

「そ、そうなんですか! 大先輩ですね!」

「まあ若い頃って言っても、ダンジョンができた頃はもう70歳位の婆さんだったけどな! ガッハッハ!」

「はは……て、店長……」

 さっきまでの暗い空気はすっかりなくなった店内。


「金剛寺はうるさいねぇ、まったく。失礼なガキだよ。

 わざわざアタシが来てやったって言うのに。

 で、錬成するのはあんた達3人かい?」

 店長をガキ呼ばわりする老婆はアキラたちを見つめる。

 緑色の瞳、ずっと見ていると吸い込まれてしまいそうな不思議な力を持っているようだった。


「は、はい! 強化石を持ってきてるんでアイテムのパワーアップお願いします」

 アキラはバケツに入った強化石を差し出す。


「ほー、これはいっぱい集めたねぇ。たいしたもんだよ。

 で、どのアイテムをパワーアップさせるんだい?」


 アキラは『ドラゴンの剣 レア度★★★★⭐︎』

 まどかは『雷神の剣 レア度★★★★☆』

 そして花子は『炎帝のブレスレット レア度★★★★★』を出す。


「ほー、なかなかいいアイデムじゃないか。たいした冒険者には見えないけどねぇ。

 ん? おいおい、このアイテムは……とんでもないね……」

 老婆は『炎帝のブレスレット』を手に取る。


「すごいオーラだね……レア度★★★★★かい?

 アタシだって現物を見るのは久しぶりだ。

 お嬢ちゃんのかい?」

 老婆は花子をジロッと見る。


「は、はい……私のです。ダンジョンガチャで引けたんです」

 緊張しながら花子は答える。


「なるほど、自分で引いたアイテムなんだな。それならまだまだ強くなるな。大事にしろよお嬢ちゃん」

「はい!」


「『炎帝のブレスレット』ほどじゃないが、この2本の剣もいいねぇ。これも自分でガチャで引いたアイテムかい?」

「あ、ありがとうございます! そうです。全部自力で引いたアイテムです」

 剣城を褒められ、喜ぶアキラとまどか。


「なるほど。このレアアイテムを自引きかい……相当ダンジョンに入り浸っているようだな。

 でもまぁ、まだまだお前たちのアイテムはピカピカだなぁ……」

 老婆はアイテムを眺めながら言う。


「……え? ピカピカ?」

 手に入れてからだいぶ使い込んだつもりのアイテムがピカピカ? アキラは首を傾げる。


「まだまだ全然馴染んじゃいないよ。自引きしたアイテムならまだまだ強くなるぞ?」

 老婆はニヤリと笑った。


「ほ、本当ですか!」

「ああ、じゃあ早速、錬成の準備をするかの……

 ところで、お前たち……金は持ってきてるのか?」

 老婆は心配そうにアキラたちに言う。


「はい。錬成は高いと聞いてたので、ある程度持ってきています」

 封筒に入った金を掲げるアキラ。


「……それだけか?」

 老婆は呆れたように言う。


「……え?」

 金欠中のアキラ。

 ありったけの全財産を持ってきたのだが……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る