第102話 まだやるかい?

「相手のイケ……剣士……なかなかやりますね」

 スクリーンで戦いを見ながらまどかがつぶやく。


「え、そう? イケメン君、防戦一方って感じじゃない?」

「……確かにアキラちゃんねるさんの攻撃はすごいんですけど、太刀筋を見切ってしっかり守ってますわ。

 このままじゃアキラちゃんねるさんの体力が……」


 ◇


「はぁはぁ……くそ、しぶといな!」

 まどかの心配していた通り、攻撃を続けるアキラの体力はみるみるうちに減っていた。


 やがて、アキラの攻撃の勢いがなくなる。


「よし! 今だ!」

 イケメンはスピードの落ちたアキラに向け剣を振り下ろす。


「うわぁっ!」

『カンッ!』


 ギリギリの所で盾で受け止めるアキラ。

 今度はイケメンが攻撃を仕掛ける。

 速くて力強く、無駄のない攻撃。


「ぐっ!」

 先ほどとは一変し、イケメンの攻撃を受けるアキラ。


「くぅ……このイケメン……強いな!

 さっきの老人みたいな不気味な強さじゃなくて、基本に忠実な正統派の強さだ」


 守っているだけじゃ勝てない! アキラは盾を相手に投げつける。


「うっ! 盾を!?」

 イケメンは投げられた盾を払いのける。


 その隙にアキラは距離をとり、剣を構える。

 向かい合う両者、決着が近い。


「はぁはぁ、あなたの剣技は面白いですッ!

 こんなに楽しい戦いは初めてです!」

 こんな状況でもイケメンはアキラに笑いかける。


「くっ……爽やか野郎め!」


 しかし、アキラは感じていた。

 このイケメンの剣技は長年の努力で培われた技術だ。

 きっと剣道かなにかの実力者に違いない。

 ダンジョンでモンスターとしか戦ってこなかった、我流剣術の自分では真っ正面からやり合えば、勝てないだろう、と。


「仕方ない……こっちはダンジョン流剣術でやらせてもらうか」


 にらみあう両者が同時に動く。


「うおおお!」

 イケメンの攻撃の方が、わずかに早い。

 アキラの目の前で剣を振り下ろすイケメン。

 しかし、アキラは攻撃を防ごうとしない。


「な、なに!?」

 困惑するイケメン。

 今までの彼の戦いの経験からは、『防がない』というアキラの行動は考えられないものだった。


「ふふふ、正統派めっ!」

 その時、アキラは指にはめている『召喚獣の指輪』に触れる。


 指輪からはカブトムシが現れる。

 カブトムシは剣を振るイケメンの顔面目がけ突進する。


「ぐわぁっ!」

 もちろん、カブトムシの攻撃は大したダメージにはならない。

 しかし、突然攻撃を食らったイケメンに、この戦いで初めての隙が生まれた。


「今だッ!」

 アキラはこの時を待っていた。

『ドラゴンの剣』を両手で強く握りしめ、イケメンの持つ剣を目がけて振りまわす。


「うおぉぉぉお! くらえ! イケメン!」


『カシャーンッ!』

『ドラゴンの剣』はイケメンの剣を粉々に砕いた。


「そ、そんな……俺の剣が……」

 倒れ込むイケメンの首筋にアキラは剣を近づける。


「……まだやるかい?」


「そこまで!」

 虎石が止めの合図を出す。

 アキラの勝利だ。


「……はっー! 完敗です! 召喚獣を使うなんて……あんな戦い方初めて見ました!」

 負けてもなお、爽やかっぷりを発揮するイケメンだった。

「ぐ……なんて爽やか野郎だッ!」


 こうして、冒険者研修の全試合が終わった。

 まどか、花子、アキラの3人は勝利することができた。

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