第103話 金剛寺

「皆さん、お疲れ様でした。

 ケガをした物も皆、回復魔法で治療し重傷者が出ずに終わってよかった。

 では、先ほどと同じように番号を呼ばれたものだけ残ってく」


 虎石が合格者の番号を呼ぶ。

 まどか、花子が呼ばれ、当然アキラも呼ばれた。


「よっし!」

「やりましたね」

「3人とも合格なんて、すごいですわ」

 いつもの3人が一緒に合格とあって大喜びする。


 アキラに敗れたイケメンも合格し、勝敗だけでは無いようだ。

 結果的に100人ほどの参加者のうち10名が残った。


「おめでとう。君たちが『政府公認冒険者』だ。

 これから登録手続きや説明会など、少し残ってもらう。

 そして、ダンジョンに関する大切なことも、合格者の君たちにだけ伝える」


 合格者に数枚の紙が渡される。

 名前や住所、冒険者歴に装備アイテムの記入等をするようだ。


「なんか免許更新に来たみたいだね」

 3人は記入を終える。


 ◇


「それではダンジョン省の人間を紹介しよう」

 数名の人が入ってくる。


「あれがダンジョン省の人たちか……公務員というより……殺し屋みたいな風貌の人が多いね」

「みなさん、冒険者上りの人たちなんでしょうね。

 あっ! アキラさん……あの老人……!」

 花子が1人の男を指差す。


「あ……あの爺さんは……!」


「ほっほっほ、すまんかったな。ワシも若者と戦いたくて参加者に混じらせてもらったんじゃ!

 お前は荒削りじゃが、なかなか強かったぞ」

 アキラを見て楽しそうに笑う老人。


「くっ……そういう事か、強い訳だよ……ねぇ、まどかちゃん? ん? まどかちゃん?」

 アキラの問いかけに返事をしないまどか。

 無視しているわけではない、固まっていたのだ。


「お、お二人とも……あ、あの人……」

 まどかはビックリした表情でダンジョン省の人間を見る。


「うん。わかってるよ。あの爺さんだろ? ビックリだよね!」

「ち、違います……1番端の人……」

「え?」

 アキラと花子が端を見る。


「ええっ!?!?」

 声を出して驚くアキラと花子。

 着慣れていなそうにスーツを着て、恥ずかしそうに立っている1人の髭を生やした男。


「ひ……髭モジャ店長!?!?」

「よ、よお……」

 恥ずかしそうにアキラたちに手を振る店長。


「ど、どうして店長がここに!?」

「ああ、虎石に頼まれて最近ダンジョン省ってやつのサポートをしてるんだ。

 自分でも政府なんてガラじゃねェのは分かってるがよ……」


「なんだ? 金剛寺は彼らと知り合いだったのか?」

「知り合いというか……うちの店にたまに来る客なんだよ」

 虎石ジュンジとタメ口で話す髭モジャ店長。


「こ、金剛寺……!? 店長、すごい名前だな……」

「ん? 金剛寺って聞いたことあるわね……」

 ダンジョンオタクの花子は何かを思い出そうとしている。


「!! 思い出した! 金剛寺といえば、虎石さんと同じパーティーの伝説の冒険者です!」

「で、伝説の冒険者!? 確かにあの迫力とガタイ……納得だね……」

「はい……古いので私も写真でしか見たことないですが……

 あれ? 昔は痩せてて、髭なんか生えてない爽やかな冒険者だった気が……」

「う、うるせェな!」

 顔を赤くする店長だった。


「そうか、さすが金剛寺の知り合いたちだな。3人とも残ったのか。彼らのアイテムもお前の店のか?」

「いや……俺の店のアイテムじゃねェな……俺も驚いたよ。あいつらがあんなに強いなんて……」


 こうして説明会は始まった。

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