第94話 火柱
花子の戦いをスクリーンで見守るアキラとまどか。
「あのゴツい男は……なんの武器を使うんだろう……?」
「うーん……見たところ武器を持ってないですわね……あの見た目ですし、肉弾戦に特化してるとかでしょうか?」
◇
「くっ、コイツ、武器を持ってない……どんな戦い方をしてくるのか分からないわね」
男と対峙する花子も、困惑していた。
「おやおや、お嬢ちゃん。来ないようだし俺からいかせてもらうぜッ」
男は花子に向け手を広げる。
「ま、まさか……」
「くらえぇ、炎魔法!」
男の手から火の玉が放たれる。模擬戦のため、魔力をセーブされているせいか、小石ほどの大きさだ。
「こ、このゴツい男、魔法使いなの!?
嘘でしょ? 筋肉の無駄遣いにもほどがあるわ!」
突然の魔法に驚く花子。
男の炎魔法をギリギリでかわす。
「危なかった……考えてみれば私、魔法を使う相手と戦ったことないのよね……」
「ふははは、びっくりさせちゃったかな? 早くギブアップしたほうがいいよぉ!」
男は続けざまに炎魔法を使う。
「……やってみましょうか!」
迫ってくる火の玉に、花子は手のひらを広げる。
「……大丈夫よね? 魔力を抑えるアイテムをつけてるんだから…… よし、ちょっと強めに……炎魔法!」
『ドンッ!』
花子の手から火柱が立ち上り、一瞬で相手の火の玉を飲み込む。魔力を抑制するアイテムをつけているとはいえ『炎帝のブレスレット』の力は規格外だったようだ。
「う、嘘だろ……!?」
巨大な火柱が迫り、恐怖のあまり硬直する対戦相手。
「や、やばい! 逃げてーッ!」
花子は慌てて火柱を消そうとするが間に合わない。
「そこまでだッ!」
虎石ジュンジのストップの合図と同時に、闘技場の脇に控えていたスタッフが、一瞬で男に駆け寄り、抱きかかえ火柱を回避した。
「あ、危なかった……」
さすがは冒険者研修のスタッフ。みんなかなりの実力者のようだ。
「ヒィィイ! 怖かったよぉ!」
プロレスラーのような男はスタッフに抱きかかえられたまま大泣きしていた。
◇
「お疲れ様。やっぱり……『炎帝のブレスレット』は危険だね……」
模擬戦を終え、戻ってきた花子に声をかけるアキラ。
「ええ……ちょっと強めに魔法を使ったんで、それがまずかったですね……」
フルパワーで炎魔法を使うと、一発で魔力が底をついてしまう。
いつものダンジョンでは魔力をセーブして使っている花子だか、自身も気づかないうちに『炎帝のブレスレット』に慣れてきて魔力が上がっていたようだ。
「それにしても、まどかちゃん、花子さんと2連勝か! これは俺も負けてらんないなぁ!」
残すはアキラの模擬戦だけだ。
すぐにアキラの番号が呼ばれた。
「じゃあ行ってくるよ! 応援よろしく!」
2人の圧倒的な強さを見て、余裕たっぷりで模擬戦に向かうアキラ。
しかし、その余裕がすぐに無くなることをアキラは知らなかった。
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