第76話 チート

「よし! これで10回目だッ!」

 アキラは10回目のレベル15のボスモンスターを撃破した。

 いよいよ運を貯め続けたガチャを回す時が来た。


「はぁー、長かったなぁ……まどかちゃんが応援に来てくれなかったら大変なことになってたよ」


「さあ、いよいよ10回ですね。ところで……誰がこのガチャを回しましょうか……?」


「確かにそうですよね……自分で引いたアイテムじゃないと、強くはなれないってことですもんね」


 髭モジャ店長から聞いた、自分で引いたガチャアイテムの方が自分に馴染みやすく、強くなれるという情報。

 誰がこのガチャを回すか、とても重要だった。

 剣を使わない花子がレアな剣を引いたり、アキラが素早さの上がるハイヒールを引いてしまうこともあるだろう。

 使えないアイテムを引いてしまうの非常にもったいない。


「まぁここはアキラさんのダンジョンなんですから、まずはアキラさんが引いてくださいよ」


「そうですわね。今回はアキラちゃんねるさんが引いてください」


「え? いいのかな……」


「いいんですよ。次は私、その次はまどかちゃん、その順番で引けば公平ですよ」


「よし、じゃあ引かせてもらうよ」


 アキラの前にダンジョンガチャが現れる。

 今まではパスし続けてきたガチャ。


「頼むぞッ!!」

 この瞬間のために、丸一日の時間を費やしてきた。

 10回分の想いを込めて、アキラはガチャを回す。


『ガチャ!』

『ドラゴンの剣 レア度★★★★☆』


「……うおーっ! やったぁ!」

 とうとうレアアイテムを引くことができたアキラ。


『召喚獣の指輪』以来のレア度★★★★☆で、剣を使うアキラにとって一番嬉しいアイテムだった。


「すごい! 本当にレアアイテムを引けるなんて! これはもう間違いないです。

 まどかちゃんの発見したこの技は確実にレアアイテムの出現率を上げることができます!」


 今までも、レベル15のガチャは何十回と回したことがある。しかし、レア★★★☆☆のアイテムを数回引いたことがあるだけだった。

 それが今回は10回パスをしてレア度★★★★☆。

 まどかがたまたま見つけた、ガチャをパスし運をチャージする方法。この方法は間違いなく有効だと確信した3人だった。


「すごいよ! まどかちゃん! これはダンジョンの歴史が変わるくらいの大発見だ」


「ええ、そうみたいですね! よかったですわ!」

 大喜びの3人。


 手に入れたばかりの『ドラゴンの剣』を眺めるアキラ。

「くぅーっ、すごい剣だなぁ! 早く使ってみたいよ!

 このアイテムに強化石を使って育ててみようと思うんだ」


 初のレア武器を手に入れたアキラは興奮していた。

 自分自身でガチャで引くことができたこのアイテムは一生もののアイテムと言うやつだろう。


「そうですね。やっと強化石を使うにふさわしいアイテムゲットできましたね!

 でもまどかちゃん、この裏技は世間には公表しないほうがよさそうね」


「そうだね。みんながこれを使うと、レアアイテムの価値がどんどん下がってきそうだからね……

 使わないレアアイテムの買取額も下がっちゃうと思うんだ」


「なるほど……確かにそうですね。他の冒険者には申し訳ないですけど、私たちだけの秘密にしましょう!

 ライバルの配信者たちがどんどん強くなっても困りますしね」


「まあ普通の冒険者は、この技はなかなか使えないでしょうけどね。

 レベル15のダンジョンは一回の入場料で数万円かかるわけだから、まずみんなガチャをパスなんて思いつかないでしょうし、10回パスしたって必ずレアアイテムが出るとも限らないんですから」


「確かに……」


「この技が使えるとなると、アキラちゃんねるさん、マジでチートですわね」


 まどかの発見した、ガチャをパスすることでレアアイテムの出現率をアップする方法。

 これをもっとも効率良く使えるのは、入場料無しで入り放題のダンジョンを持っているこの3人だった。

 無料で行き放題のダンジョンを持っているアキラは、そのチートさを噛み締めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る