第74話 救世主ーメシアー

 一緒にダンジョンに入るアキラと花子。

 今回はレベル15のダンジョンだ。

 最近はレアアイテムを手に入れるため1人での冒険が多かった2人。


「一緒にダンジョン入るのは久しぶりだね」


「そうですね。最近はソロ冒険ばっかりでしたから。ソロはソロで気楽でいいんですけどね。レベル15となると1人じゃちょっと怖いですからね」


 ダンジョンはレベルが上がれば上がるほど、ダンジョンガチャでレアアイテムを手に入れられる確率は増える。

 さらにパスを続ければ、その確率はさらに上げられると思う2人はダンジョンのレベルを上げた。


「じゃあアキラさん。今回は私が前衛をやりますね」


「お? 花子さんが? 珍しいね」 

 彼女は今まで電気銃を使って、前で戦うアキラのサポートすることが多かった。


「ふふふ、今の私は電気銃じゃありません! 魔法使いです」

 花子は最近手に入れたばかりの『火の杖』をかかげる。


「あー、そっか。炎魔法が使えるんだったね。じゃあよろしく頼むよ。危なくなったら俺が加勢するよ」


「心配無用です。行きますよ!」

 花子は襲いかかるモンスターに、次々と火の玉を放つ。


「おお! あれが炎魔法……カッコいいな!」


「アキラさん、しっかりついてきてくださいよ!」

 炎魔法を使いこなし戦闘力が上がった花子、後ろに控え近づくモンスターを斬り刻むアキラ。

 久しぶりの2人での戦闘だったが、コンビネーションは錆びついてはいなかった。

 むしろ、1人で冒険し、それぞれ成長したのか以前よりもパワーアップしていた。


 あっという間にボスステージにたどり着く。

 花子は炎の弾丸を放ち、燃え盛るボスモンスターをアキラが斬る。

 鮮やかな連係プレーであっという間にクリアした。


 2人の前にダンジョンガチャが現れる。


「……レベル15のダンジョンだから、普通に弾いても結構いいアイテム出るよね……」

 ガチャを回したい欲にかられるアキラ。


「アキラさん! 我慢ですよ! 運をチャージするんです」

 花子はアキラを制する。


「うぅ……よし、パスだ!」

 回されないダンジョンガチャは姿を消す。


「さあ! あと9回がんばりましょう!」


「あと9回か……先は長いなぁ……」


 レアアイテムマラソンは始まったばっかりだ。


 ◇


 レベル15のダンジョンを何周かした頃、さすがに2人は疲れていた。


「はぁはぁ……疲れましたね……」


「うん……」


 レベル15のダンジョンは2人で冒険しても1時間近くかかってしまう。


「花子さん……ボス戦、お願い……」


「えぇ、私も疲れてるんですよ……」


 はじめはレアアイテムにゲットに、心を踊らせ張り切っていた2人だが、動きが鈍くなっていた。

 何とかボスを倒すフラフラの2人だった。もちろん、ダンジョンガチャはパスをする。


「ふぅ……少し休もうか?」


「はい……そうしましょう」

 5回目のパスを終え、一旦アキラの部屋に戻る2人。


「ふぅ……こんなに疲れたのは学生時代の部活以来だよ……」


「はい……4.5時間、ぶっ通しでしたからね」


 レベル15のダンジョンで、10回目でガチャを引こうと決めていた2人だったが、なかなか大変なことだと気づいた。

「5回終わって、いま折り返しだから……この調子で行ったら1日1回、ガチャを回せるかどうかだね」


「険しい道のりですね。

 これでレアアイテム出なかったら結構ショックですね……」

 疲れ果て、ブルーな気持ちになる2人だった。

 その時。


「あら、こんにちは」

 アキラの部屋にまどかがやってきた。


「あ……まどかちゃん……」


「学校終りましたので、すぐに行きましたわ。お二人とも、だいぶお疲れのようですね……」

 学校を終え、やってきたまどかは汗だくでボロボロの2人を見て驚く。


「……まどかちゃん、いいところに来たねぇ……」


「ふふふ……まどかちゃん、若いんだから後半戦は頑張ってもらうわよぉ……」

 ボロボロになりながら、ニヤリと笑う2人。


「こ、後半戦!? 一体なんですの……?」

 意味はよくわからないが、いま自分は大人に利用されそうになっていると直感で感じ、怯えるまどかだった。


 突如現れた救世主まどかの存在に、助かった……と、疲れ切ったアキラと花子は喜んだ。

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