第50話 ボンバーマン

「さあ、始めるわよ! タダでダンジョンに行けるなんて……夢のようですわ!」


 翌日、学校帰りのまどかがアキラの部屋にやってきた。もちろんアキラの部屋のダンジョンを使うためだ。


「ほう、制服で来ましたか……たいしたものですね」

 制服JKのまどかをジロジロと眺めるアキラ。


「ちょっとアキラちゃんねる、そんな見ないでくれませんか……? キモいですわ……」

 ゴミを見るまなざしのまどか。


「今日は……ダンジョン配信の歴史が変わる日ですわ!

 なんせ私が……顔出し配信を始めるのですから!」


「え? まどかちゃん顔出しするの?」

 驚くアキラ。


「ええ! 最近の『アキラちゃんねる』での花子おば……花子お姉さんの人気を見ていたら、私も負けてられないな、と」


「まあ……人気だなんて……」

 花子は顔を赤らめる。


「でも、その人気も今日までですわ! 現役JK『まどかチャンネル』の顔出し配信で私がトップを取りますわ!」

 拳をつきあげるまどか。


「でも……まどかちゃんの学校厳しいって言ってなかったっけ? だから本名の円山 麗華まるやま れいかも使わないででやってるくらいだし……」


「そうです……そこで秘密兵器がありますわ!」


「お!? 秘密兵器? なになに?」

 興味津々きょうみしんしんなアキラと花子。


「……それは……今、ウチにあるので、すみませんが運んでもらえますか……?

 重くて運べないので……」

 申し訳なさそうなまどか。


「重い? まあいいけど……じゃあさっそく、まどかちゃんち行こうか?」

 アキラが腰を上げようとすると、


「ダメです! 私も行きますよ!」

 立ち上がるアキラを制止する花子。


「え?」


「本当に警戒心がありませんね! この子は、またスキあらばハダカを見せつけて、アキラさんを脅してきますよ!」

 花子はまどかを指さす。


「なんですって!? 失礼ね! 人を痴女ちじょみたいに!」


「アキラさん! このビッチと二人きりは危険です!」


「キイィーッ! ビッ、ビッチって……私は処女よ!!」

 まどかは怒りにまかせて、とんでもないことを言い出す。


「フン! どうだか?」


「はは……落ち着きなって2人とも」

(なんだか……美女2人が俺を取り合ってるようで悪くないな……)


 いつものように揉めている花子とまどかを見て、アキラはまんざらでもなかった。


 ◇


 3人はまどかの部屋にやってきた。


「へー、いい部屋だなぁ……」

 そこはアキラの部屋とは比べ物にならない広さ、豪華な家具が並ぶお嬢様の部屋だった。


 アキラはまどかの部屋の窓から外を見る。


「……なるほど。俺の部屋がしっかり見えるな……」


「たしかに……カーテンでも付けましょうよ、アキラさん……」


「油断したわね! アキラちゃんねる、あなた達の行動は全て丸見えだったわ!」

 まどかは勝ち誇ったように言う。


「でも待てよ……まどかちゃんの部屋から俺の部屋が見えるってことは……俺の部屋からもこっちが見えるのでは!?」


「うわぁ……キモ……」

 アキラの発言にドン引きするまどかであった。



「さあ、これが秘密兵器ですわ! 運んでくださいますか?」

 まどかの部屋に置かれた段ボール。


「オッケー……ってこれ……俺が持ってきた段ボールじゃないか!?」


 まどかの配信の秘密兵器、それはアキラの家に誤配送されたあの段ボールだった。


「そうですわ! コレを楽しみに待っていたのにアキラちゃんねるの家に届くし、ハダカまで見られて散々でしたわ!」


「まさか俺がコレをここに運んで、またウチに運ぶことになるとはね……重いんだよなぁ、コレ……」


 アキラは再び、この災いの元凶げんきょうの段ボールを運んだ。2日ぶり2回目だ。


 ◇


 アキラの部屋で秘密兵器の箱を開けるまどか。

 衣装や武器などのアイテムがギッシリ詰まっている。


「配信用のアイテムだったのか。こんなに買って……重いわけだよ……」


「見てください! どうですか?」


 まどかは段ボールからピンク色のヘルメットを取り出す。


「お、ヘルメット?」

「なに? アキラさんのパクリ?」


「ち、違うわよ! アキラちゃんねるのヘルメットとは全然違うわ! 御覧なさい!」


 まどかはヘルメットをかぶる。

 アキラのような顔をすべて覆うフルフェイスのヘルメットではなく、頭とアゴの部分だけを隠せるジェットタイプのヘルメットだ。


「うん! これなら私の可愛さは分かるけど、全部は見えないから誰かは分からない。完璧ね!」

 ヘルメットが気に入った様子のまどか。


「なんか……ボンバーマンみたいね……」


「ボンバーマン? なにかしらそれ?」


「……なんでもないわ」


 ジェネレーションギャップを感じる花子であった。



★☆★☆★☆★☆

読者様へ

お読みいただきありがとうございます。

おかげさまで50話までこれました。

まだまだ続きますので、お楽しみ頂ければと思います。

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