第49話 花子覚醒、そして……

 ステージに立つ花子の前にボスゴリラが現れる。

 今までのゴリラより一回り体は大きく、筋肉のよろいに覆われている。


「これがボスモンスター……この威圧感は普通のモンスターとは違いますね……」

 花子に緊張が走る。


 ボスゴリラは花子に駆け寄り、殴りかかる。

 スピードも普通のゴリラとは桁違いだ。


 花子にボスゴリラの拳が襲う。アキラのボディを殴り、悶絶もんぜつさせたあのパンチだ。


「花子さん! 危ないッ!」

 アキラの叫び声がダンジョンに響く。

 しかし、アキラの声が花子に届くより先に、彼女はボスゴリラの拳を避けていた。


「は、速い!」


 今まで見たことのない、軽快けいかいな動きの花子。

 ボスゴリラは連打を繰り出すも、彼女は全ての攻撃を避けている。


「アキラさん! すごいです『スピードの指輪』! 敵の攻撃がスローモーションに見えますよ!」


 ◆コメント欄◆


【名無し 花子さんすげぇぇぇえ!】



【名無し 可愛くて強いとか……もうアキラいらないじゃん!】



【名無し カッコイイです花子さん!】


 新アイテムの『スピードの指輪★★☆☆☆』の性能はすごかった。

 モンスターと向かい合う戦いがほぼ初めての花子でも、ボスモンスターが手も足も出なかった。


 花子は攻撃を避けつつ、電気銃でボスゴリラを撃つ。

 一方的な攻撃の前にボスゴリラは倒れ、あっという間に砂になり散っていった。


「はぁはぁ! よし、やりましたよ!」

 花子はドローンカメラに向け、笑顔を向ける。


 ダンジョン配信の女神の初勝利に沸くコメント欄、当然チップも飛び交う。


「すごい……花子さんあんなに強かったなんて!

『スピードの指輪』の力もあるけど……花子さん、意外と戦闘センスあったりして……」


 仲間の初勝利を喜ぶも、自分の存在価値に不安を感じるアキラであった。


「では……私にとっては初めてのダンジョンガチャいってみましょう!」

 初めてボスモンスターを倒した花子、当然、ダンジョンガチャを回すにも初めてだ。


 ◆コメント欄◆


【名無し 花子さんの……初めて……ゴクリ】



【名無し 速報! 花子初体験!】


 コメント欄に怪しげなコメントが流れる中、花子はガチャを回す。


「緊張しますね……いきます!」


『ガチャ!』


強化石きょうかいし レア度無し アイテムを強化できる』


強化石きょうかいし? なんですかね……レア度は無し?」

 武器や防具が飛び出すと思っていた花子は拍子抜けした。


「んーハズレってことかな……?」


 ガチャから現れた『強化石きょうかいし』というアイテムを眺め、首をひねる2人だったが。


 ◆コメント欄◆


【名無し お、強化石きょうかいしか。レベル10超えるダンジョンだとよく出るよな】



【名無し これを錬成師のとこ持っていくとアイテムを強化してくれるんだっけ?】



【名無し 楽勝だったな。次はもっと上のレベルのダンジョン行ってくれよー】



「へー、アイテムを強化か! そんな石もあるんだね」


「そうみたいですね。ほんとコメント欄には助けられますね……

 今度あの髭モジャ店長のところに持って行ってみましょうか?」


 こうして新装備での配信は無事終わった。


 ◇◇◇


 その頃、ある奇妙きみょうな事件が起こっていた。


 田舎の山道で『見たことのない動物がいる』という、地元の老人から通報があった。

 駆け付けた警察が見つけた動物、それはどう見てもスライムだった。


 ダンジョンに詳しくない老人は驚いただろうが、警察官はモンスターの知識が多少はある。

 レベル1のダンジョンに現れるスライムなど怖くはない

 弱っていて、動けないスライムを警察官が踏みつぶすと、スライムは砂になり消滅した。


 しかし、おかしいことがある

 ダンジョンはあくまで異世界だ

 ダンジョンでゲットした剣や防具は現実世界にもってこられるが、召喚獣や魔法などは異世界でしか使えないのだ。


 そして、モンスターもダンジョン内でしか生存できない。

 モンスターを外の世界に持ち出すと、砂になって消えてしまう。


 しかし、このスライムは弱ってはいたものの、ダンジョン内と同じくゼリー状の姿をとどめていた。


 警察官はこれを上層部じょうそうぶに報告した。



★読者様へ★

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