第47話 嵐の後

「さっそく配信しましょう! と、言いたいところですが……私はこれからアルバイトなんですわ。

 ダンジョンは明日から使わせてもらいますわね!」

 残念そうなまどか。


「お-、今日もアルバイトか……頑張るね。まどかちゃんはなんのアルバイトしてるの?」

 アキラが何気なく質問をすると、食い気味に花子がしゃべり出した。


「……はっ! ま、まさか、最近流行りのパパ活というやつでは……!?」

 花子が嫌そうな目でまどかを見る。


「失礼ねッ! そんなことするわけないでしょ! 普通の居酒屋よ!

 まったく、このおばさんは……そんなことばっかり考えてるのね! どんだけ性欲溜まってるの! 性欲魔人なの!?」

 まどかは呆れたように言い放つ。


「くっ! せ、性欲魔人!? この小娘……!」

 花子は顔を真っ赤にする。


「じゃあ今日は失礼しますわ。明日の夜、またおじゃまします」

 そう言い、まどかはアルバイトに向かった。


 ◇


 嵐が過ぎ去ったようなアキラの部屋。


「はぁ……疲れたね」


「ええ……あれが若い力なんですかね?」


「俺のせいでこうなっちゃって申し訳ないけど、まどかちゃんとも上手くやっていこうね……」


「はい。大丈夫ですよ。生意気なクソガキですけど……きっと悪い子じゃないと思います。育ちの良さも伝わってきます……

 ダンジョンのことも詳しいしだろうし、配信者としてはライバルですけど、こっちが利用してやりましょう!」


「うん、よろしくね!

 さて……まどかちゃんのことはそれくらいにして……そろそろ俺たちもヤろうか?」


「ヤ、ヤろうか!? そ、そんな……私……アキラさんは良きパートナーですが……その」

 顔を赤くし、あわてる花子。


「あの……ごめん。新アイテムも買ったし、そろそろ配信をヤろうか? って」


「あ、ああ……そうですよね。わ、分かってますよ!」

 花子は顔を赤くし怒り出す。


「はは……」

 アキラは、まどかが花子に言った 性欲魔人という言葉を思い出していた。


 ◇


「さて、新アイテムを装備してっと……うん! やっぽり盾カッコいいな!」

 新アイテムの『銀の盾 レア度★★★☆☆』、『鋼の剣 レア度★★☆☆☆』を持つアキラはご満悦だった。


「お! いいですね、『ダンジョン冒険者』って感じがしますよ!」

 花子は『スピードの指輪 レア度★★☆☆☆』を装備する。


「さあ! 行こうか!」


 アキラと花子は引き出しに入る。

 ハシゴを下り、ロビーに着くとここからは異世界のダンジョンだ。


「わ! なんか体が軽いですよ!? これが『スピードの指輪』の効果なんですね!」

 装備品の能力が発揮されるのはダンジョン内だけだ。


 辺りを俊敏しゅんびんに動き回る花子。

「どうですか? 速くないですか?」


 普段は運動神経が悪く、俊敏しゅんびんという言葉とは縁のない花子だったが、軽やかに飛び跳ねる。


「おー、速い速い!」


「ふふふ、今なら私……反復横跳はんぷくよことび世界記録も出せそうです!」

 嬉しそうに左右にピョンピョン跳ねる花子であった。


「ふむ……でもあのスピードか……俺も欲しいな……」


「『』……?」

 花子はアキラを睨みつける。


「い、いえ……なんでも」

 最近、花子が怖くなってきているアキラであった。


 新アイテムの調子は良さそうだ。


「よし、じゃあカメラ回すよ?」


「はい! ……なんか……昨日も配信してたのに久しぶりのような気がしますね……」


「たしかに……今日は色々あったからね……」

 新アイテムの買い物、まどか襲来と忙しい一日だった。


 召喚獣のカブトムシ・ドローン・カメラを召喚し、配信を始める。


「ゴホン……みなさん! こんにちは! 『アキラちゃんねる』です」

「こんにちはー、私もいまーす!」


 ヘルメットのアキラとマスクの花子は今日も配信を始める。



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