第46話 仲直り

「それでは、今日からよろしくお願いしますわ」


 まどかはニコニコでお辞儀をする。なんだかんだ、育ちの良さが隠しきれないまどかであった。




「くれぐれも無理はしないでくださいよ?」


 花子はまどかにねんを押す。




「もちろんです! 無料でダンジョンに行けるなんて……夢のようですわ!」




 普通の配信者は入場料を払ってダンジョンに入り配信をする。


 この入場料がなかなかの出費しゅっぴなのだ。




「まどかちゃんはチップで稼いでそうなのにね」




「まあチップは結構頂いてますけど、アイテムやら入場料でほとんどなくなってしまいますわ。


 最近はアルバイトを増やして頑張ってたところです」




「アルバイト!? まとかちゃんち、お金持ちなのに……」




 アキラは隣りの立派な円山まるやま邸を見る。




「ああ、まどかちゃんはお嬢様なんですか。生意気で世間知らずなわけですね」


 花子が言う。




「し、失礼ね!


 まあ……確かにウチは裕福ゆうふくなんですけど、両親がなかなか厳しくてお小遣こづかいは少ないんですよ……


 それにしても、さっきから『まどかちゃん』って……まあいいんですけど……」 




「あ、ごめん……『まどかチャンネル』を見てる時から『まどかちゃん』だったから、つい……」




「いいですわ『まどかちゃん』で。


 私は『アキラちゃんねる』と……フフッ『花子おばさん』と呼ばせてもら―――」




「『花子お姉さん』でしょッ!?」


 バカにしたように笑うまどかの胸ぐらをつかむ花子。




「は、はい……『花子お姉さん』……怖ッ!」




(花子さん……昔のおしとやかなイメージは全くなくなってしまったよ……)


 OL時代の花子を思い出すアキラであった。




「俺はアキラちゃんねるか……まあいいけど


 それにしても、いつ俺たちが『アキラちゃんねる』の配信者って分かったの?」




「ああ、それでしたら昨日ベランダにいつもアキラちゃんねるが被ってるヘルメットが干してあって……

 不用心過ぶようじんぎませんか……?」


 あきれた表情のまどか。




「ああ……そういうことか……」




「くっ! 私がヘルメットを洗濯しろなんて言ったばっかりに!」


 頭をかかえる花子。




「でもまさか、お隣さんが『まどかチャンネル』だったとはね、世間は狭いよ……


 円山 麗華まるやま れいかだから『まどか』だったとはね」




「フッ、まどかちゃんなら『麗華☆チャンネル』とかにしそうな承認欲求しょうにんよっきゅう強めのタイプに見えますけどね……」


 花子はバカにしたように笑う笑う。




「いちいち言い方がムカつくわね、花子おば……花子お姉さんは!


 私の高校はすごい厳しい学校なんですよ。


 ダンジョン配信をしてるなんてバレたら退学ですわ。身バレだけは気をつけないといけません!」




「へー、そんなお嬢様学校なんですね?」




「ええ、XX女学院ですわ」




「え!? メチャクチャお嬢様学校じゃない……」


 驚く花子。




「なるほどねぇ……フフ……いざとなったら俺たちが学校にチクっちゃえば良いんだね」


 まどかの弱みを握ったアキラ。




「くっ、……まあ、その時は私は退学、アキラちゃんねるは逮捕ですけどね!」




「ぐぐ……分かった……仲良くしよう!」





★読者様へ★

お読みいただきありがとうございます。

たくさんのフォロー、評価、励みになります!

少しでも続きが気になる! 面白い!と思って頂けたら評価★★★頂けますと嬉しいです(^^)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る