第28話 死闘

 復活したアキラ。しかし、ボスゴリラは強力だ。


「うーん……レベル10は調子に乗りすぎたかな……」

 反省するアキラ。


「でも、あのボスゴリラを倒さないと帰れませんよ!」

 涙目になる花子。


「うぅ、強いんだよなぁ……あのゴリラ……どうするか……?」


 打開策が浮かばないまま、ボスゴリラの電気の痺れが解ける。


「まずいですよ! またゴリラが襲ってきますよ!!」

 うろたえる花子。


「く…もっと強力な防具にしておけば、アイツの攻撃にも耐えられるのにな!」


「……あっ! いいこと思いつきましたよ!」

 何かを閃く花子。


「アキラさんに私の『防御の指輪』を貸しますよ! 貸すだけですよ!?」


「なるほど……それなら防御力は跳ね上がるな!」


「私は離れて銃で戦えますからね!

 アキラさんがゴリラと戦って、隙ができたら私が撃つ!

 ゴリラが痺れて動きが止まったらアキラさんがトドメを刺す!

 これでいきましょう!」


「さすがプロデューサー! いいアイデアだ!」

 これでボスゴリラの攻撃にも耐えられるはず、アキラはそう思った。


 花子はアキラに『防御の指輪』を渡す。


 しかし……


 ◆コメント欄◆


【名無し おい! 花子ちゃんがケガしたらどうすんだ!】



【名無し 花子ちゃん……聖母かな??】



【名無し むしろアキラのヘルメットを花子ちゃんに渡せ!】



 何をしても荒れるコメント欄であった。


 それでも、今はコメント欄を気にしている2人には余裕はない。

 アキラはすぐに指輪を装備する。


「おお! なんというか……防御力があがった! って感じがするね」


 さすがは高級アイテムだ。ヘルメットとは比べ物にならない力を感じるアキラであった。


「さあ! かかってこい!」

 ボスゴリラはアキラに突進する。


 さっきまでのアキラだったら吹き飛ばされていただろう。

 しかし、今のアキラの防御力は上がっているのだ。


「くっ、なかなかいい突進だ……だが!」


 アキラは剣を振り下ろす。

 ボスゴリラの硬い皮膚はなかなか貫けないが、隙が生まれる。


「今だ!」


 花子はボスゴリラに向けて電気銃を撃つ。

 狙いすました弾丸はボスゴリラにヒットする。


「やった!」


 強力な電流で動きが止まるボスゴリラ。


「よし! うおぉぉぉ!」


 アキラは全力で剣を振る。

 止まったボスゴリラになら、致命傷を与えることもできる。


 ◆コメント欄◆


【名無し すげぇコンビネーション!】



【名無し いけ! アキラ!!】



【名無し アキラさん! 頑張って!】



 視聴者もアキラを応援するコメントが増える。


「うおおおお!」


 ボロボロになったアキラの鉄の剣はボスゴリラの体を貫いた。


「はぁはぁ……やった……」


 ボスゴリラは砂になり散っていった。



 ◆コメント欄◆


【名無し うおおおおお!】



【名無し すげぇ戦いだった!】



【名無し これは死闘だわ!★チップ3000円】



【名無し 良い配信だったわ! 今後も花子さん出るなら『まどかチャンネル』超えは確定だな】



『アキラちゃんねる』始まって以来の激闘に賞賛のコメントが溢れる。


「アキラさん! やりましたね!」

 生きて帰れるとホッとする花子。


「ああ……よかった……」

 ボロボロになった鉄の剣を見るアキラ。



 すっかり気の抜けた2人の前にダンジョンガチャが現れる。


「あー……勝つのに必死でガチャのこと忘れたよ」


 レベル10のダンジョン。いいアイテムが出る確率は上がる。


『ガチャ!』


『脱出の羽 レア度★★☆☆☆ ボスを倒さなくてもダンジョンから脱出できる。一度使うと無くなる』


「へぇー、こういうアイテムもあるんですね!

 これがあれば今回みたいな時に逃げられますね!」


「いいアイテムだね。さすがレベル10のダンジョンだ」


 初めてのピンチに見舞われた今回の冒険だが、無事にクリアした2人だった。

 そして本格的なダンジョン配信者として視聴者から認められた配信となった。

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