第12話 機材とアイテム
翌日、会社では震えるアキラの姿が。
(ふぅ……行くぞ!)
「あ、あの……部長……」
アキラは決意し、上司に話をかける。
「あ!? なんだよ?」
話す前から不機嫌な部長にビビるアキラ。
(逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……!)
「あの、実は……来週、有給休暇を頂きたくて……」
「はぁっ? 何言ってんだテメェ!!」
鬼の形相になる部長。
「ひぃぃっ!」
『おい、アイツ有給休暇取ろうとしてるぜ……』
『ウチには有給ないって聞いたけど?』
『有給休暇って……なに??』
アキラの発言にざわつく社内。
「おい……お前みてぇな無能社員に有給なんてあるわけねぇだろ! 黙って働け、馬鹿野郎!」
アキラを蹴り飛ばす上司。
「ぐわっ!」
「九よ……俺はな、自分の結婚式ですら休めなかったんだ……甘ったれんじゃねぇ!」
「ぶ、部長……」
部長の悲しい過去に絶句するアキラ。この会社では有給休暇は取れないのだ……
「さあ、九、営業に行くんだ。ノルマは俺たちを待っちゃくれねぇぞ」
「は、はい……」
(やばいな……有給休暇取らないと花子さんにブチ切れられそうだ……)
◆
「で……有給休暇は取れずにノコノコと帰ってきたと……?」
「はい……情けないです……」
その日の夜も花子はアキラの部屋に来た。
「呆れましたね。本当に配信者として頑張るつもりはあるんですか?」
「うぅ……申し訳ございません……」
後輩の花子に説教をされるアキラ。
「情けないですね……とりあえず、今日は金曜日です。明日、明後日と仕事は休みなんで頑張って配信しましょう」
「は、はい……ところでその荷物の山はもしかして……?」
花子は大量の箱を持ってきていた。
「ふふふ、よくぞ聞いてくれました。見てください!」
花子は荷物を開く。最新のパソコン、高画質のカメラなど配信に必要な機材だ。
「おーっ! すごい! これなら配信も動画編集もバッチリだね!」
「パソコン類は秋葉原で買ってきましたよ。そして……とっておきはダンジョンアイテムの道具屋で買ったコレです!」
花子は袋から何かを出す。
「これは……ヘルメット!?」
「そうです! ヘルメットと言っても、これも実はダンジョンアイテムなんですよ!」
『黒のヘルメット レア度★★☆☆☆ 防御力アップ』
真っ黒なフルフェイスのヘルメットだ。
「おおー! いいね、これなら顔も隠せて防御力も上がるのか!」
「いつまでもあんなダサい目出し帽を被ってるわけにはいきませんからね!」
「ありがとう! 大切にするよ」
「いえいえ、早くこのヘルメットにスポンサーのシールを貼れるように頑張りましょう!
あと……私の装備品として、これも買いました……」
花子は申し訳なさそうに、可愛らしい指輪を出した。
『防御の指輪 レア度★★★☆☆ 防御力アップ』
「え? レア度3!? 俺よりも良いアイテムかよ……」
「あ、当たり前じゃないですか! 私は戦えないんですから! アイテムでしっかり身を守らないと……ね?」
(まったく、自分だけいいアイテムを買って!)
「まあ仕方ないか……ちなみに……このヘルメットと指輪っていくらくらいするの?」
アキラはダンジョンアイテムの値段はまったくに無知だった。恐る恐る値段を聞く。
「えーっと、ヘルメットは10万円くらいで、指輪は……まあいいじゃないですか、細かいことは、稼げばいいんですよ!」
「じゅ、10万!? え? 星2つのヘルメットで10万だと、星3つの花子さんの指輪は……」
「い、いいじゃないですか! デザインも可愛い指輪ですもん!」
「……女子だな」
女の子は可愛いモノには目がないことは妹のいるアキラは知っている。
「あっ、これ渡しておきますね。パソコンとかアイテムの領収書です!」
「ああ、はいはい……」
花子は束になった領収書をアキラに手渡す。
「えぇっー!?」
とんでもない金額の領収書の束を見てアキラは叫んだ。
「機材とアイテムで……こんなにすんの?」
「し、仕方ないんですよ! いい動画を撮るためには必要な経費です……とりあえず『アキラちゃんねる』で収益が上がるまでは、私が立て替えておきますよ」
「助かるよ……早く稼げるようにならないとね。
ちなみに……俺の武器の『木の棒』って売るといくらくらいなのかな?」
「……あー、500円くらいでしたかね……」
低所得者サラリーマンのアキラの貯金は数万円だ。
早く配信者として稼がなければ……
★★★★★★★★★
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