第11話 有給休暇?

『アキラちゃんねる』二回目、そして、花子とチームを組んでから初めての配信は無事に終わった。


「ふう……お疲れさん。初ダンジョンはどうだった?」


「はい、楽しかったですよ! ありがとうございました!」


(よかった。結局、花子さんはダンジョンが大好きな女の子だからな)

 ダンジョンを楽しむ姿は普通の可愛い女子だ、とアキラは思った。


「でも……配信の方は全然ダメですね!」


「うぅ……」


「まだまだ視聴者を置き去りにしてますね。もっともっと配信者としての勉強が必要です!」


「は、はい……」


 すぐにプロデューサーとしての厳しい顔つきに戻る花子。

 プロフェッショナルの彼女に甘さは無い。




 アキラの部屋に戻ってきた二人。


 ダンジョンで手に入れたアイテムなどは扉の並ぶ『ロビー』に置いてきた。

 毎回、ガチャを回して剣や盾といったアイテムが増えたら、アキラの部屋はすぐにいっぱいになってしまう。


「ちょっとパソコン借りますね! さっそく今日の配信をアップします」


「お、流石だね。俺のパソコン使ってよ」


「これくらい配信者なら当たり前ですよ!

 見どころを短く切り抜きしたり……って、なんですか! このオンボロのパソコンは!?」


 アキラの古いパソコンを見て愕然とする花子。


「オンボロって……まあ安いパソコンだけどさ……」


「……よくこんな機材で配信始めましたね……無知は恐ろしいです。

 でも、機材は揃えないといけませんね……よし! 明日は私、会社休みますね!」


「えぇっ!?」


「なに驚いてるんですか? 私はね……本気で配信者で一攫千金を狙ってるんですよ!!」


「くっ……甘かった! 自分が情けないよ!」


 鬼の形相の花子にビビるアキラ。



「本当はアキラさんにも休んでほしいところですけど。とりあえず私一人で機材や衣装を見てきますよ」


「お! 衣装か……かっこよく、それでいてスタイリッシュであり、親しみもある! そんなデザインがいいね!」


「……注文が多いですね。ダンジョンアイテムの売買をしてる古道具屋があるんで行ってみます。

 一度行ってみたかったですし、これから私たちもレアアイテムが取れたら売りに行くこともあるでしょうからね」


「頼むよ。 それにしても、あのブラック企業を休むとは……恐れ知らずだね……」


「私は経理ですからね、営業のアキラさんよりは休みやすいですよ。

 でもアキラさんも来週は有給とってくださいね! 視聴者が増えてきたこの時期が大切なんです!」


「ゆ、有給!? うちの会社にそんな制度あったかな……?」


 骨の髄までブラック企業が染み込んだアキラには有給休暇は都市伝説だった。






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