第10話 コウモリ

 レベル2のダンジョンに入ったアキラと花子。


 先頭を木の棒を構えたアキラ、その後ろにカメラを持った花子がついていく。


 ◆コメント欄◆


【名無し 今日はレベル2か】



【名無し  お! いい武器持ってんじゃん!】



【名無し  画質悪いわね……カメラマン雇う前に良いカメラ買いなさいよ!】




『うーん、アキラさんのスマートフォンで撮ってるからですけど……画質が良くありませんねぇ。早く良い機材を買いましょうね』


「そうだね。早く稼げるようにならないと」


 イヤホンに聞こえる花子の言葉に、胸元のマイクに返事をする。

 これは便利だな、とアキラは思った。



「さあ! レベル2のダンジョンはどんなモンスターがいるのでしょうか!?」


 その時、アキラは周りに何かが飛んでいるのに気づく。


「なんだ……? 痛っ! これは……コウモリ!?」


 レベル2のモンスター。それは飛び回るコウモリ達だ。

 コウモリと言ってもここは異世界であるダンジョン、現実のコウモリによく似たモンスターだ。


『アキラさん! 戦闘開始ですよ! 暴れまわってください!』


「よし! うおぉぉお!」


 アキラは木の棒をブンブンと振り回す。


「くそ! すばしっこいなコイツら、なかなか当たらん!」


 素早く飛び回る何十体ものコウモリにアキラの攻撃は当たらない。


 アキラの攻撃を避け、コウモリはアキラに噛みつく。


「痛っい!!」


 コウモリから見ればアキラはいきなり自分の家に入ってくる侵入者だ。


「ぐわぁぁぁ!」


 モンスターの攻撃にアキラは身もだえる。



 ◆コメント欄◆


【名無し www】



【名無し いいぞコウモリwww ★チップ1000円】



【名無し コイツの配信、面白れぇなw】



 低レベルダンジョンのモンスターに攻撃される、アキラのやられっぷりにコメント欄は盛り上がる。


「これは……なるほど!」


 プロデューサーの花子は何かビジネスチャンスを掴んだようだ。




 襲い掛かるコウモリを必死に倒し、アキラはボスステージまでたどり着く。


 現れたボスはもちろん、通常のコウモリより少し大きめのボスコウモリだ。


 飛び掛かるボスコウモリの攻撃を木の棒で捌くアキラ。


「お! サイズは大きいコウモリだけど、一体なら楽勝だぜ!」


 先程までたくさんのコウモリに襲われていたアキラには、一体だけのボスコウモリは大した相手ではなかった。


「くらえ!!」


 アキラの木の棒がボスコウモリにヒット。

 ボスコウモリは砂になり散っていった。


「はぁはぁ、よし!」

 アキラは小さくガッツポーズをした。

(また勝ってしまった……俺は天才か!?)


 しかし、ここはレベル2のダンジョン。

 子どもがゲーム感覚で訪れるレベルのダンジョンだ。

 決してアキラの戦闘能力が高いわけではないがアキラは浮かれていた。



『アキラさん! なに勝利の余韻に浸ってるんですか! 早く視聴者に向けてコメントを言ってください!』


 イヤホンから花子の怒った声が鳴り響く。

 敏腕プロデューサーは勝利の余韻など許してはくれないのだ。


「は、はい! あ、みなさん! ボスコウモリを撃破しましたよーっ!」


 カメラに向けて親指を立てるアキラ。


『ださっ』

 花子の不意に出た辛辣な言葉はアキラの耳にしっかりと聞こえた。


「……ぐっ。さ、さあ。それではお待ちかねの……ガチャのお時間です!」


『ガチャ!』


『木の盾 レア度★☆☆☆☆』


「うん……まあこんなもんですよね……

 それで、 明日もダンジョン配信するのでチャンネル登録、高評価お願いします。バーイ!」



 ◆コメント欄◆


【名無し うーん、ザココウモリに襲われてる時がピークだったな】



【名無し カメラワークよかったな】



【名無し やれっぷりが最高に笑えたわ★チップ500円 】



【名無し 毎日やんのか! アキラ金持ちか?】



 こうして、『アキラちゃんねる』二回目の配信は終わった。






★読者様へ★

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