第5話 熊埜御堂(くまのみどう)さん

「いいですか? だいたい、『アキラちゃんねる』のダンジョン配信は雑過ぎますね! もっと視聴者に寄り添った配信を心掛けてください!

あとチップには必ずお礼を! そんなんじゃチップ貰えませんよ?」


「は……はい」


「それにモンスターの倒し方もワンパターンで、あれじゃ視聴者も飽きます……って、いちじくさん! 聞いてますか!?」


「……」


帰り道、ずっと説教を受けるアキラ。


社内では大人しい熊埜御堂くまのみどう花子だが、素の性格は先輩のアキラにもズケズケと厳しいことを言う。


そして、まさかのダンジョン配信ガチ勢だったのだ。




「ちなみ今日はどこのダンジョンへ行くんですか? この時間からだとA市のダンジョンとか!?」


「……」


「あっ! そういえば昨日の配信ってどこのダンジョンだったんですか? ガチ勢の私でも見たことないダンジョンでしたよ?」


「そ、それは……」

(まさか自宅にダンジョンの入り口が出来たとは言えない……いや、逆に熊埜御堂くまのみどうさんに相談した方がいいのか!?)


新しいダンジョンが出現したら、警察なり政府に連絡をするべきなのだろうか?

しかし、入り口が自宅ということもあり、通報するべきか迷っていたアキラは彼女に打ち明けることにした。



アキラの家に到着した二人。


「まあ、汚いところだけど入ってよ」

アキラは自宅に彼女を招き入れる。


「え? 家はいいですよ。これから配信のためにダンジョンに向かうんですよね?」


「……ちょっと熊埜御堂くまのみどうさんに見てほしいものがあるんだ」


「なんですか……? はっ! まさか、そうやって女性を誘い入れてるんですか!?」

なぜが胸元を抑え赤くなる彼女。


「そんなわけないだろ! 両親に妹も住んどるわ!!」


「あ、なら安心ですね!」


「まったく……」





「ただいま」


「おかえり、今日は早かったのね」


23時近い帰宅、アキラの家族もすっかりブラック企業に慣れてしまっている。



「アキラ、ご飯は食べるの……って、えぇっ!? お客さん!?」


「お、遅くにすみません……」


熊埜御堂くまのみどうはアキラの母親にペコリと頭を下げる。

外見だけ見るとおしとやかで可憐な美人だ。



「た、大変だよ! アキラが女の子連れてきたよ! それも美人よ!」


「なに!? でかしたアキラ!」


「お兄ちゃん! 彼女!?」


夜遅くに大騒ぎになるいちじく家、アキラが女の子を連れてきたのはもちろん初めてのことだ。



「ほっといてくれ! ただの同僚だよ! 部屋で少し仕事の打ち合わせするだけだから!」


少し赤くなるアキラと彼女は二階のアキラの部屋に向かう。


「ごめんね、熊埜御堂くまのみどうさん」


「いえ……仲のいいご家族ですね! それで、私に見せたいものとは!?」


「あぁ……熊埜御堂くまのみどうさんは口は堅いかな?」


「く、口!? あまり考えたことはありませんが……並ってところですかね?」


「並か……まあいいか。実は……」


アキラは意を決し、勉強机の引き出しを開く。


「中をみてくれる?」


「え? な、なんですか? もしかして……変な本とDVDを見せて喜ぶタイプの変態ですか……?」


「そんなわけないだろ! 早く見ろ!」


「は、はいっ!」


(まったく! とんでもない女だ! 大人しい美人かと思って損したよ!)



彼女は引き出しを覗き込む。


「この引き出しが何なんですか……えっ……!?!?」


目を真ん丸にして驚く熊埜御堂くまのみどうを見て、どこか得意げなアキラ。





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