第4話 同僚の美人
「おい
「は……はい。すみません……」
『アキラちゃんねる』配信者
毎月ノルマに追われるアキラ。
上司はいつも厳しい。
「とっとと外回り行ってこい! タコッ!」
「は……はいぃぃい!」
(くそっ! 配信者で成功してこんな会社辞めてやる!!)
上司に激怒され、逃げるように外回りに行くアキラ。
その背中を怪しく見つめる一人の美女がいた。
彼女はアキラの会社の経理だ。
「うーん……やっぱりそうだよなぁ……」
◆
22時、アキラは仕事を終える。
ブラックサラリーマンのアキラにしては早い終業だ。
「はぁ……今日も疲れたな……さあ! 早く帰ってダンジョン配信しなきゃな!」
すっかりダンジョン配信に夢中のアキラは足取りも軽やかに会社をあとにする。
「あ、あの……
「ん?」
軽快に歩くアキラは会社の出口で女性に呼び止められる。
「あ、君は……えーっと、確か……経理部の
「はい……お疲れ様です。急にすみません」
アキラと同じ会社だが、部署が違うため、接点がほとんどない一つ年下の後輩。
地味で目立たない性格だが、ルックスの良さで社内の男にファンも多い。
お互い珍しい苗字ということもあって意識はしていたが、話しかけられたのはこれが初めてだ。
「あの……ちょっとお聞きしたいことがありまして……お茶でも行けませんか?」
「え? 俺に?」
(
いきなり美女に話しかけられ焦るアキラだったが、今日は配信を一刻も早くしたい気分だった。
「えーっと、ごめん。今日はちょっと急いでて……」
「そうですか……分かりました。すみません、こんな遅くに」
「いえいえ……気をつけて帰って」
残念そうに落ち込む
せっかくの美女の誘いを振るような形になってしまったが仕方ない、早く帰って配信をしよう、アキラはそう思い歩き出す。
しかし、
「あ、
「ん?」
呼びかけに振り返るアキラ。
「……昨日のガチャの……木の棒は残念でしたね」
「あーっ、ホントだよね! イヤになっちゃうよ! ……えっ!?」
「……やっぱり!」
「あぁ……」
(しまった、つい答えてしまった……)
彼女は昨日の『アキラちゃんねる』のダンジョンガチャで木の棒が出たことを知っている。
これはつまり……
「見てましたよ! 『アキラちゃんねる』!」
彼女は目を輝かせる。
「うぅ……恥ずかしい……」
知り合いに配信を見られるという言いようのない恥ずかしさを知ったアキラ。
「
「えぇ!? 女の子がそれ言う!?」
「ち、違いますよ!」
顔を赤らめる
(こんなガツガツ系だったっけ? ダンジョンがそんなに気になるのか!?)
「あの……私……実は」
「な、なに……?」
彼女は何かを言い淀む。
「私に……ダンジョン配信のお手伝いさせてください!!」
「え!?」
突然の申し出に驚くアキラ。
「お願いします!!」
「いや……お手伝いなんて……俺、配信始めたばかりだし」
「はじめこそ肝心なんです! スタートダッシュでフォロワーをしっかり掴むことが配信者として成功するカギだと思うんです!」
彼女はコンサルタントのような事を言い、アキラを説得する。
(な、なんなんだこの熱量は!? いつも
「
「うっ……そ、そうだよ」
(バレていたか……)
「分かりました! 私も付いていきます!」
「えぇっ!?」
「安心してください! 私……結構役に立つと思いますよ?」
「!?」
こうしてアキラは同僚の
社内の大和撫子は実はちょっとヤバい奴なのでは?
アキラはそう思った。
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