⑮
二日目の訓練も、昨日の続きとなった。だが、やはりというべきか、二人とも地面に倒れていた。
だけど、昨日に比べれば、長く戦っていた。たった一日で、二人になりに昨日の反省を活かして戦っていたのが見て取れた。本人達も自分に何が足りないのか、そして、現状、どうすればいいのかを模索して、それを試している。道理で成長が早いわけだ。
だからこそ、あまり急ぎ過ぎてもいけない。ゆっくりと色々と教えていかないと、ウーラオリオギリュシア支部の大事な冒険者だからな。
「さて、今日はもうここまでだな。で、動けそうか、二人とも?」
「きょ、うは、大丈夫、だ」
「だ、大丈夫です」
なんとか上体を起こして、頑張ろうとしているが、体がそれに追い付いていないのか、プルプルしている。やれやれ、仕方ない。
「ほい」
昨日と同じように二人を担ぐ。抵抗するように暴れるが、正直抵抗になっていないのが何よりの証拠だ。ちなみに、シバは雑に担いでいるが、パールは丁重に扱っている。
「まあ、昨日よりは良くなったから、これくらいは受け入れなさい」
そのまま、昨日と同じように馬車の中へと運び、休ませた。さて、いよいよ明日は、クロリアに着くわけだけど………俺は、ジュラさんから返信のあった手紙を懐
から取り出すと、その中のある部分に視線を落とす。
「『魔道具の話以外にご相談したい事があります。どうか、冒険者クランとして名のあるウーラオリオのお力を貸してはいただけないでしょうか? 詳細は、会った時にお話しします』か」
ジュラさんが、わざわざ冒険者クランとして書いているという事は、つまり、相談したい事とはそういう方面でという事だ。さて、今回はどんな事だ待っているというのか、手紙の感じだと、ジュラさん達が今すぐにどうこうなるようなもの事はないとは思うが、それでも、謎は深まるばかりである。
そして、これを知った時の二人に対してなんというか今の内に考えておかないとないけない。そんな俺の心中とは真逆にも、空には満点の星が輝いていた。
そして、それ以降も同様に過ごしながら、進んで行く。日に日に二人の連携や、個々の技量が手探りではあるが、良くしようとしていこうとするのが伝わってくる。そして、俺たちは予定通りにクロリアに着く事が出来た。情報通り、あまり大きな村ではないな。村の前に門のようなものはあるけど、周りを木で出来た柵で覆われているだけだ。見張りもいないようだ。
だからこそ、気になる事もあるけど。
村の中に入っていくと、来客が珍しいのかな。遠巻きに村の人達が一様に馬車を見
て来る。その視線に、どこか怯えがあるように見えるのは気のせいだろうか?
俺は馬車から下りると、ある村人の一団に近づいていく。
「こんにちは。少しよろしいでしょうか?」
「……何でしょうか?」
「この村にドウヤクという店があると思うのですが、場所が判らずに困っておりまして、良ければ、教えていただけると助かるのですが」
「ドウヤクに? いったい、何の用事で……」
「ドウヤクを経営しているジュラ夫妻とは、知人でして、今回彼らと会う約束をしたのですが、実はこちらへ来るのが初めてでして、あっ、これがその証拠です」
懐から、封筒を取り出し、村人の男性に見せる。
「確かに、ジュラさんの字だ。じゃあ、本当に……申し訳ありません、不躾な態度を取ってしまって。この村に訪れる人はそう多くないので」
「いえいえ、気にしていませんので」
「ドウヤクはこの先を行った場所にあります。看板も出ているので、判るかと」
「判りました。ありがとうございます」
お辞儀とお礼を言うと、馬車へと戻る。
「何を話していたんだ?」
「いや、場所を訊いてきただけだよ。行こうか」
手綱を握ると、馬車は動き出す。さて、どうやら、この村では現在進行形で何かが起こっているのは、間違いなさそうだな。この、妙にピリついた空気に、二人もそれとなく違和感を覚えているから、辺りの警戒を強めている。
事の詳細は、ジュラさんから訊くとしよう。
教えて貰った通り、ドウヤクはあった。小さいが木で出来た立て看板には屋号も彫られている。店の規模自体は一軒家で、この村の中では大きく広い部類に入る。おそらく、住居兼店になっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます