⑤
「一先ずは、食べるとするか」
料理は温かい内に食べるのが、鉄則だ。それが、焼かれた肉ともなれば当然だ。俺の言葉を合図とばかりに、各々肉を食べ始める。
この絶妙な焼き加減が最高にいい。味付けは塩と胡椒とシンプルだが、それが素材そのものの味を引き立てて、美味い。
「ほら、ベリト。野菜も食べろ」
ナベリウスは取り皿に野菜を取り分けると、ベリトの前に置く。
「うん、ありがと」
「ははは、まるで親子のようなやり取りだな」
「アスタロト、お前もだ」
ナベリウスは、アスタロトの分も取り分け、彼女の前に置く。
「ふふふ、親子だね」
ベリトの言葉に、ナベリウスは肉に噛り付きながら、ベリトと目線で火花を散らす。この二人を隣同士にしたのは、失敗だった。
「この二人は、相変わらずだな」
「だな」
ナベリウスの言葉に、俺は同意する。何かにつけてこの二人は競うからな。
「ありがとう。そうだ、ナベリウス」
「なんだ?」
目の前の二人は一先ずは置いておくとして、俺の分の野菜も取り分けてくれていた
ナベリウスに礼を言い、ナベリウスに訊く。
「あの黒い首輪について、何か判ったか?」
「あれか……」
前回のクリルでの一件で、遺人に装着されていたあの黒い首輪の魔道具をナベリウスは回収して、調べていた。一応、今までもベリトやプルーティアの方でも調べてはいて貰っているが、ナベリウスなら、更なる発見をしたかもしれないと思ったからだ。
「今の所は、真新しい発見はないな」
「そうか」
そうだよな。そう簡単に見つかるわけがないか。
「ただ」
「ただ?」
「あの魔道具が、モンスターパレードを人為的に発生させる為の物だけではない気がする」
「どういう事だ? あれはモンスターに装着させ、そのモンスターを媒介にして、他のモンスターを操る事が出来る物だろ」
それが、今までに判った事だ。実際、それでペラルゴンは二度攻められている。
「バアル達の話や、実際に魔道具を見てみて、それで間違ってはいない。だが、あの『
「それは……」
確かに、あれはクロノルスの持つ神生魔剣『
「おそらくだが、あの魔道具を造ったのはエピスメーテだ。あの変態がそれだけで、終わらすとは思えん。それに、あの場所でエピスメーテは何かを試していたという事を考えると、あの魔道具にはオレ達がまだ気が付いてない用途がある、と考えていいだろう」
「判った。ナベリウス、引き続き頼めるか?」
「任せろ」
本当に、頼りになる男だ。
「バアル、あたしは?」
「ベリトも頼むよ」
「任された」
この二人が、協力して調べてくれれば、きっと何か見つけるはず。
「おいおい、ベリト。ナベリウスだけに任せておけばいいんじゃないか?」
「は?」
アスタロト、お前はベリトを煽らないといけない病にでも罹っているのか? それと、ベリトも簡単にその煽りに乗るんじゃありません。
まったく、この二人は仲が良すぎるというのも問題だな。
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