④
「では、お先に失礼します!」
「ああ、気を付けてな」
「はい!」
商品の補充も終わり、先にマキュリーが帰るのを、俺達は見送る。
「今日もよく働いたな。こういう時は、何か美味しい物を食べに行くべきだと思うんだが、どうだ?」
「いいな」
ナベリウスの提案に俺は、即答する。
「アスタロト、ベリト、二人はどうする?」
「行く」
「問題ない」
ベリトとアスタロトもこの提案に乗ってくれる。そうと決まれば、どこに食べに行くかだけど、俺の行きつけのあの店に行くべきだろう。
「『コネコ』でもいいか?」
「あの店は雰囲気がいい! それに何より、料理が美味いからな、賛成だ!」
「悪くない」
ナベリウスもアスタロトもあの店を知っているのか。そうだよな。俺がこの国に来る前に、この首都ローアに居たわけだから、知っていた当然か。
うん、待てよ。そうだとすると、この二人は、まだ俺が出会っていない店を知っているはず。よし、今度連れて行って貰おう。
「じゃあ、戸締りしていくぞ」
各々帰り支度をして、コネコへと向かって行く。なんか、この四人で食事に行くって、毎回思うけど、やっぱり落ち着くんだよな。
コネコに着き、店に入ると、店内は相変わらず繁盛しているのか、活気がある。
「いらっしゃいませ、四名様ですね。こちらへどうぞ」
そう言って案内されたのは、二階の仕切られた個室のような席に案内される。なんだか、ここに通される割合が高い気がする。これも、オリアスさんが裏で手を回しているなんてこと………あるわけがないか。
「どうする?」
「肉だな」
「前から気になっているんだが、エルフって肉が好物なのか?」
「好んで食する奴は少ないな。私には理解出来ないが」
「それは同意」
「じゃあ、とりあえず、この肉焼きの盛り合わせ頼んで、ナベリウスは?」
「肉ばかりでは栄養に偏りが出るな。この野菜の盛り合わせも頼む」
「えー」
「ベリト、良い魔道具技師はバランス良く食事を摂るものだ」
「それって、ナベリウスだけだよ」
「じゃあ、飲み物だな。久しぶりに酒でも飲むか?」
「悪くないな」
「あたしもいいよ」
「お子様が飲めるのか?」
「年寄りよりかは、飲めるよ」
「バアル、今この二人に酒を飲ませるのは、火に油を注ぐようなものだから、なし」
「だな」
結局、飲み物は果実のジュースを頼む事にした。注文し終え、メニュー表を戻すと、俺は三人の事を何と気なしに眺める。
「なんだ?」
俺の視線に気が付いたのか、アスタロトが訊いてくる。気が付かれるほどに見ていたか。
「いや、やっぱり落ち着くなって思っただけ」
「バアルの言わんとする事も判る。こうして、オレ達がまた集まるだなんてちょっと前まで想像出来なかったからな」
腕を組みながら、ウンウンと頷いて賛同してくれるナベリウスの言葉の通り、俺もまさかこんな形に一緒に何かをやるとは思っていなかった。
「二人はさ、あの後何をしていたの?」
ベリトが、テーブルに肘を置き、頬杖をつきながら質問する。それは、俺も気になるな。手紙で定期的にやり取りをするようなメンバーでもないし、各々表立っての活動をしていないから、噂を聞く事もなかった。
「オレとアスタロトは、各国を転々としていたな」
「それって、アスタロトの趣味に付き合ってか」
「ああ」
「おかげで、貴重な資料や遺跡の類をこの目で見る事が出来たから、有意義な旅だった」
アスタロトは、過去の事を調べるのが趣味というか、生きがいにしている。出会った時も、あるダンジョンで出会ったのだが、そのダンジョンは滅んだ文明の遺産が眠っているなんて噂というかデマに近かったのだが、それを信じてダンジョンに潜ってきた二人に出会ったのが初めてだった。
結局、デマで。待っていたのは、その噂を信じてきた冒険者から装備品の類を追いはぎする連中だっただが、当然俺達はそいつらを撃退したのは言うまでも無い。
そんな縁があって、ナベリウスとアスタロトは冒険者として登録し、俺達と一緒に行動する事になった。
「しかし、その旅も今はお休みか」
「金が無いのでは致し方ない」
そう、この二人がウーラオリオギリュシア支部で働く事になった一番の理由は、金が底をついたのが一番の理由だった。まあ、話を聞くと相当カツカツでやりくりしていたらしい。その原因も簡単に判るが。
「なんだ?」
その原因であるアスタロトは、俺の視線に首を傾げる。本当に苦労したんだな、ナベリウス。こいつよりは、給金は多くしておくから、頑張れ。
「お待たせ致しました」
そうこうしていると、注文していた料理や飲み物がきた。
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