⑥
「バアル先輩ってなんだか、そういう事に詳しいですね」
なんだか、アストレイアみたいな事を言い出し始めた。
「ウーラオリオに所属して色んな冒険者とか接しているからな。これぐらいは、嫌でも身に付いてくる」
「私も詳しくなりますか?」
「それは、もちろん。それに俺の場合は、身近に魔法の知識を教えてくれる人が居たから、余計にだな」
その瞬間、足に軽い衝撃が走る。視線を下げれば、ベリトが俺の足を軽く小突いていた。ベリトは、彼女と事ある度に魔法で競っていたから、俺が彼女に魔法を習いに行った事を根に持っていた。教えて貰ったのは昔の事なのに、今でもその話題を出すとこれである。
それなのに、なぜか魔法戦闘の息は合うから不思議な話だ。
「とにかく、それだけ人工魔剣に付与されている魔法技術は凄いって事だ」
「そうなると、そんな凄い魔法を使える魔導士はどうやってそれを行使しているんですか?」
「人工魔剣を造れる人間はこの世界でもごく一部で、ほとんどが謎に包まれている。だけど、ある一人の魔導士がこう言ったそうだ。「世界に選ばれた者のみが、あれを読めるって」な」
「意味深なセリフですね」
「まったくだ」
おそらくだが、世界に選ばれたというのは、適正みたいなものではないかと思うが、結局のところ何も判ってはいないのが現状だ。
「それで、人工魔剣を造れる人間ないしクランは常に色んな人間に狙われる事になり、その結果、接触する事を極端に制限するようになったわけだ」
それだけ価値のある物を造り出しているなら、当然の措置ではあるが、さて、どうしたものか。
「まあー、気長にがんやりましょう!」
うん、スバルはもうダメだな。その後は、ベロンベロンに酔ったスバルを家が近いという事でラウムがスバルを背負い、連れて帰ってくれる事になった。
その背を見ながら、俺達はこう思った。あれでは、どちらが先輩でどちらが後輩か判らないなと。
ちなみに、その翌日、ラウムが一番乗りではなく、マルガスさんがもうクランに来ていた。珍しい事もあるもんだと二人で話をしていると、スバルとラウムが揃って来た。
しかし、二人の様子は真逆だった。スバルはいつも通り元気に来たのだが、ラウムの方はどことなく疲れている。
ラウムにどうしたのかと訊いてみると、彼女は俺達と別れた後の事を語ってくれた。
ラウムはあの後、スバルを送り届け、家の中のまで運んだそうだ。そして、帰ろうとしたその時、ラウムを悲劇が襲う。
酔ったスバルがラウムの手を掴み、そのまま寝台に引き込み、そのまま抱き枕にしたそうだ。彼女はスバルの拘束を取り払おうと頑張ったが、とんでもない力で抱きしめられ、拘束から抜け出す事が出来ず、そのまま朝を迎えたそうだ。
そして、この話の恐ろしいのは、スバルがその事をまったく覚えていない事にある。しかも、昨日あれだけ飲んでいたのにも関わらず、この元気の良さ。その代わりに、ラウムは疲れている。こんな彼女は一緒に働き始めて、初めて見る。
スバルの酒癖は知っているつもりだったが、俺達はまだスバルの知られざる一面を知ってしまった。本当に気を付けねば。
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