第3話 貴嬪
後宮の身分制度は複雑ではあるが、役割と上下関係は細かく定められている。どちらが上かハッキリしないと諍いの元になるからである。
もっと早く説明してくれたら楽だったのに、と思いつつも、あのタイミングでなければ再び逃げだしていたかもしれないから、宦官はやはり狡猾である。
後宮において1番は
その次は
その次は
その次が、先ほど言われた
その後に嬪、貴人、常在、答応と続き、それ以下は使用人の宮女である。尚宮(総務)、尚儀(礼楽)、尚服(衣服)、尚食(食事)、尚寝(居住空間)、尚功(工芸)と後宮は全てが女性で構成されている。
つまり、だ。
この牡丹坊という花の名前が冠された邸をもらってている時点で、嫌な予感がするわけである。しかも牡丹の咲く中庭がついている。牡丹は古来より国花であり、花の王である。つまり花の名前がついた邸の中では1番の邸に違いなかった。
扉が開いて、傅いた若い女の子が入ってくる。歳は同じくらいか、もしかしたら小柄で童顔なだけで少し年上かもしれない。
「
呼びかけられた敬称が
「
思わず本音を漏らしてしまった私に、
「
牡丹坊は歴代の寵妃の邸で
どちらにしろ、皇帝のお通りを数年間避けてお役御免を狙える立場ではなさそうだった。
「今夜は陛下がいらっしゃいますよ」
今夜と聞かされてもう吐きそうだった。
「本当は部屋で待っていたいぐらいだったという嬉しい伝言がございます」
私は3食昼寝付きの気楽な宮女と聞かされてきたのだ。皇帝陛下に出迎えられたら吐く…
「ちょっと、待って。具合が悪いかも」
「長旅でしたものね。すぐ床につかれて休まれてくださいませ。夜にはお通りがありますから体調を万全にしなければなりません」
「
お通りになる皇帝陛下に、最後の質問だけが答えられそうだ。
陛下、
私が今出来るのは、皇帝のお通りがある前に後宮から逃げることだけだ。
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