第2話 提案
「話は大体飲み込めたわ」
目の前の役人の名前は
「
つぶらな瞳をキラキラさせながら、
「だって
自分の国の皇帝がそんな長ったらしい名前なのを初めて聞いた。私は
「どっちも嫌ですよ。寵妃になれるわけもないし、毒殺だの、女の諍いだの真っ平ごめんです。おんなじぐらい嫌です!私は勉強して自立して生きていきたいんです。後宮なんて男に頼っていきる女の巣窟じゃないですか…」
「後宮でも勉強はできるわ!いや、むしろしてもらわなきゃ困るくらいよ。それに
話はこうだ。
やっぱり逃げるなら関所よね。
「神様、仏様、万々歳様、私の首が飛ぶのォオ!後宮は3食昼寝付きで勉強もできるし、お通りさえなければ暇だからお願いィイ!それに、お通りさえなければ、宮女は数年で田舎に帰ったりもできるわァアア!しばらく辛抱してちょうだいィイ!」
「ねえ、それホント⁉︎」
私はくいついた。キョトンする
「数年で後宮から出れるってとこ」
初耳だった。一生出られなくて、皇帝が死んだら先の後宮は皇后以外は全員出家させられるとか、一緒に埋葬されると思っていた。
「嘘じゃないわよ、全く見込みがない子は新しい子と交代させられるのよ。ただ飯食らわせても仕方ないから」
皇帝陛下のお通りがないと病む子は多いらしい。暴飲暴食がひどくて激太りしたり、病気になってしまったら見込みなしと判断され里に帰らされるらしかった。送り込める人数にも限りがあり、宦官は自分の担当の女の子を寵妃にする為に必死なのだから、入れ替わりがあるのは考えてみれば至極当然である。
どうせ、私も追われる身。数年姿をくらますのに後宮ほど安全な場所はない。
「宮女なってみてもいいかも…」
呟いた私に、宦官は目を光らせニヤリと笑う。ぷにぷにの小さいオカマのおじさんに見えても、悪意と罠のの巣をくぐりぬけて生きてきている宦官なのだと、改めて私は身を引き締めた。
「そうね!じゃあ、まずは衣装に着替えてもらいましょうか」
軽い気持ちで承諾した私だったが、姿勢を良くするために本を頭の上に重ね茶杯をその上において優雅に歩く為の訓練や、お話をするときに指先をどんな形で美しく見せるかの種類の稽古が始まり、案外勉強よりしんどいかもと思いつつ、関所をいくつも越えて1週間後には後宮の門前に着いた。深い堀には水が張られ、向こう側から橋を下さなければ入れない。後宮は
橋は馬車で渡れる。その馬車が橋を通過するタイミングで思い出したように、
「いい忘れてたけど、
やられた。目の前でホホホと「せっかくだから寵妃になって生き残って私を出世させてね」と、満腹感いっぱいの笑みを浮かべる宦官はやはり毒蛇の巣の住人に違いなかった。
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