冬至

 冬至の日、私は陸上部の練習のため校庭にいた。


 冬至は一年の中で昼の時間が一番短い日。太陽が高く昇らず、早々に沈んでしまう日だ。空は灰色がかった青で、少し寂しげに見えた。寒さが肌に染みて、風が冷たく頬を撫でる。この時期の長距離走の練習は、本当に辛いと感じる。息が白く、吸って吐くたびにその冷たさを感じる。


 今日は特に風が強く、校庭を走っていると、その風が何度も私を押し返すように感じた。足元の砂が舞い上がり、目に入ってしまい、痛みを感じる。そんな中でも、私たちは練習を続ける。コーチの笛の音が響き、私たちの息遣いと共にリズムを刻む。



 時が経つのが早い冬至の日、練習が終わる頃にはすっかり暗くなっていた。


 終わりを告げた部活動に肩を撫で下ろすと、夕方の冷たい空気が一層肌寒く感じさせる。部活仲間と一緒に校庭を後にしながら、昼が短いとなんだか寂しいという話題になった。外で部活動をする私たちはみんな、暗くなるのが早いこの時期を少し物悲しく感じていた。


「冬至の日って、何か特別なことをするよね?」


 友達の真奈が問いかけてくる。


「そうだね、例えば柚子湯に入ったり、かぼちゃを食べたりするんだよ」

「へえ、ゆず湯っていいな。私も入ってみようかな」


 そう言って真奈は微笑んだ。


「年の瀬が近づくと、なんだか寂しくなるよね」


 確かに、年末は色々なことを思い返す時期でもあり、少し感傷的になるものだった。けど、暗い気分にはしたくなかったため、私は返事をする。


「でも、それだけじゃなくて、新しい年を迎えるワクワク感もあるよね!」



 ◇



 部活が終わった帰り道。

 暗い夜道を部活のメンバーで歩く。


「ゆず湯にでも入ってくつろごうかな」


 とふと真奈が呟いた。


「温かいお湯に浸かってさ、冷えた体を温めるその瞬間が楽しみだよね」


「確かにそうだよね。家に帰ったら、すぐにゆず湯の準備をしようかな!」



「冬至って、寂しいこともあるけど、楽しいこともいっぱいあるよね」


 部活仲間との会話や、ゆず湯の温かさ、そして新しい年への期待感。そんなことを感じながら、私は冷たい風に吹かれつつも笑顔を浮かべた。


 冬至が楽しいと感じるのは、特別な時間を過ごすことができるからだと思う。家族や友達と一緒に過ごす瞬間、一年の終わりと新しい始まりを迎える準備、その全てが心を温かくしてくれる。


 冬至は未来へ向かうための季節だって思う。

 そう考えると、冬至が楽しいものに思えてくる。



「冬至って、やっぱり楽しくて好きだな!」

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