学校帰りに、友達と塾に行く。高校二年生にもなれば、否が応でも大学受験を意識させられてしまう所だったが、とうとう私も塾に行かされることになった。

 塾に通い始めるにあたって友達の久美ちゃんに相談してみたら、「一緒のところに通おう」と紹介してもらい、久美ちゃんと一緒の塾に行くことになった。


 久美ちゃんは中学時代からの友達で、とても仲が良い子だ。だけど学校では、クラスが違ったりしてなかなか話しができないでいた。塾に一緒に行くようになってからは、学校からの帰り道で一緒に話すことも増えた。

 そういうことができるようになっただけでも、塾に通い始めたっていうのは私にとってはプラスかもしれない。


 今日も久美ちゃんと話しながら塾へとやってきて二人で隣り合った席に座った。

 授業の準備をしながら、久美ちゃんが話しかけてきた。


「学校の授業ってさ、やっぱりわかりにくいよね」

「それは、私も思う。塾に来るようになってから、なんだか視界が開けたっていうか、学校の授業も分かるようになってきた気がするんだ」


 久美ちゃんは、嬉しそうに笑った。


「だよね! ここの塾は、私のオススメだからね。一緒に成績上げようね!」



 ◇



「はぁー、疲れたー!」


 授業が終わると、久美ちゃんは思いっきり後ろに伸びをすると、そう言った。

 学校の授業よりもわかりやすくて、楽しいというのはあるけれども、学校の授業と合わせると一日何時間勉強しているんだろうっていう時間だ。疲れるのも無理はなかった。



「じゃあ、一緒に帰ろ!」


 そう言って、私と久美ちゃんは一緒に帰り始める。



 塾からの帰り道。

 疲れているから早く帰りたい気持ちもあるけれども、それと一緒に達成感と開放感がある時間帯だ。帰り道がてら話し込むのが決まりになっていたりする。

 帰ってもやることはなくて、ただ寝るだけだ。そう思うと、いつまでも久美ちゃんとの話が延長できる。


 十字路のところにある自販機。車通りもそこそこあるし、民家が近くにあるわけじゃないから、夜に話していても周りには迷惑が掛からないような場所。


「昨日の学校の授業でさ、世界史の説明が全然わからなくてさ。説明省略しているところが多かったんだよね。純ちゃんのところどうだった?」

「世界史の先生同じだっけ。私も、そこわからなかったんだ。けど、今日の塾だとわかりやすかったね」


「そうそう、すっごいわかりやすいの。痒い所に手が届くーって思って。やっぱりそうだったよね! 純ちゃんも一緒で良かったー」


 冬が訪れる前の寒い空気。

 そんな中でするこういう話も私は好きだ。



「そういえばさ……。純ちゃんって好きな人とかいる?」

「えっ、なになにいきなり?! 私に話を振るときは、まずは久美ちゃんから言うべきでしょ!」


「ふふ、その反応は純ちゃん、気になる人がいるんだね?」


 街灯の明かりに、久美ちゃんが恥ずかしそうに笑っているのが見えた。何か言いたそうにしながらも、言い出せないでもじもじしているようだった。


「それを言ったら、久美ちゃんもだよ。こういう話を振るっていうことは好きな人がいるってことでしょ?」

「……はは、バレた?」


 そうやって、夜の自販機の前で恋バナをするのも塾帰りの好きなところ。

 塾に通い始めてから生活が楽しくなったかもな。


 塾、好きかも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る