4月
エイプリルフール
今日は、臨時で学校に来ているの。
入学式の準備をするのは、新二年生の役割なんだって。
なんだそれ?って感じだけど。
けど、今日は楽しみがあるんだ。
なんと今日は、エイプリルフール!
一年に一回嘘をついても許されちゃう日なの。
私の友達の華子ちゃんに、嘘ついてみよう。
可愛い嘘を思いついたんだよ。うふふー。
廊下にいる華子ちゃんに声をかける。
「華子ちゃん。これね、『恥ずかしくならない薬』なんだ。食べてみてよ!」
「えー! ありがとう! 美味しい、美味しい!」
これって、ただのグミだけれども。
私の一押しグミだからね。
美味しいのも当然。
華子ちゃんは食べ終わると、いたずらっぽい笑顔を浮かべた。
「せっかくだから、このグミの効果を試してみたいな!」
華子ちゃんはそう言うと、廊下にいる太郎君の所まで走って行った。
太郎君は、イケメンのサッカー部の男子。
多分学年一、モテモテな男子だよ。
そんな男子に何をするんだろう……?
「太郎君! 私ね、トモちゃんから、恥ずかしくならない薬をもらったの! だからさ、何か試してみてよ!」
「……はぁ? 何それ? まぁいいけど」
太郎君も、乗り気になっているようだった。
太郎君は、華子ちゃんと同じようにいたずらっぽく微笑んだ。
そのまま、華子ちゃんを廊下の壁に押して。
そして、手で壁をドンッ。
華子ちゃんを逃がさないっていう風に、威圧している感じ。
華子ちゃんと、太郎君の顔が近い。
「華子、俺の彼女にならない?」
……えぇええーーーーー!?
「なぁ、どうかな?」
……いやーーーー!!
それは、恥ずかしい。
そばで聞いてる私でも恥ずかしいんだもん。
華子ちゃんだって恥ずかしいはずだよ。
早く、ネタ晴らししないと。
私が駆け寄ろうとすると、華子ちゃんはこちらを向いて、うんうんって頷いていた。
いや、絶対恥ずかしいでしょ、華子ちゃん。
『恥ずかしくないから大丈夫!』みたいに頷いてるけども。
恥ずかしいって、顔に書いてあるよ。
目が泳いでるし、顔も赤くなってるし。
華子ちゃんは目をつぶって、太郎君の方を向いて首を横に振る。
そうすると、太郎君は攻め続けた。
華子ちゃんの顎を持って、くいっと上にあげる。
華子ちゃんって背が高くて165cmくらいあるの。
太郎君も180cmくらいの身長。
高いところで、目線を合わせて。
顔も、近い近い。
理想の美男美女が何をするのよ。
「ダメかな?」
ドキドキ。
なんか私の方が、ドキドキしてるよ。
人がキスするところなんて見たことないし……。
華子ちゃんのプルンとした柔らかそうな唇。
太郎君の優しい唇。
それが合わさるのかな……。
「うん……。少しだけならいいよ……」
華子ちゃん、何言ってるの!
ダメでしょ!!
こんな廊下で!!
誰が見てるかも分からない。
最低でも、私は見ているよ。
ダメだよ、ダメだよ!
私のせいで、なんか二人がいかがわしいよ!
風紀委員の方ー!
学級委員の方!!
先生でも、誰でもいいから来てーーー!
心の中で叫んで、私は目をつぶっていた。
……ちらっと眼を開けると、二人は私の方を見ていた。
「「ってってれー!」」
二人で、『ドッキリ大成功』的な効果音をして……。
「トモちゃん、ごめん。嘘でしたー。ドキドキした?」
「……は?」
「これ、太郎君と私が仕組んだ、恥ずかしがらせるドッキリだったんだよー」
「えっ? えっ?」
太郎君と華子ちゃん。
二人で、笑いあっている。
「私たち、幼馴染だし。即興でこういうこともできるんだよー」
「え、そうだったの……?」
「ふふふふー」
「もう、華子ちゃんってば! びっくりしちゃったよ!」
エイプリルフールで騙されるっていうのも、ちょっと楽しかったことは、否めない。
けと、ドキドキを返して欲しいよ……。もう……。
華子ちゃんは、笑いながら言ってくる。
「エイプリルフールって、楽しいね。私好きだよ!」
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