第34話 再起
「御殿や本宮の抜け道や隠し通路をいくつか教えよう。
特に私が王になってから改造した所は、明昭王や焔も知らないだろうからな」
頼人は再び立ち上がると、千景にそう告げた。
「それは私も聞きたいです!」
悠幸は興味津々で言った。抜け道や隠し通路と聞くと、何だか心踊る響きを感じてしまうのだ。
その反応に千景は苦笑した。
「特別だぞ。絶対に他の者には言ってはならないからな」
そして頼人は修繕の際に利用した舞台の足場や通路、浄化の間から姿を見られずに最短で行く道を伝えた。
「ありがとうございます。貴重な情報を……」
良いんだ、と頼人は少し歯を見せて笑った。
「たとえ王位を奪われても、この黄泉を治める存在であることは変わりない。
一度その任に着いたからには、最後までその責務を全うさせてもらう」
誇り高く言い切る主上の言葉に、千景と悠幸は聞き入った。
やはり彼こそが黄泉の王だと再認識する。
「この場は術者らの力を合わせて、結界を内側から破ることを勘案している。
ただ、私自身がその影響を直接受ける可能性が高いから、すぐに十分に動けるかわからない。
だからこそ周りの者……藤子や近衛、宮に仕える者も皆、信用している。千景もその一人だ」
「はい」
「さっき清望殿でまだ伝えきれていなかったことなんだが、王の一族の子は長い歴史で見ても、養子に出されることが多い。
宮の外の生活も知って、健やかに育つように。そういう意図もあった。
それでも兄上が近くに呼び寄せたのは、しっかりと千景のことを大切に想っていたからだ。
だから千景は、千景として生きたことを悔やまなくていい」
頼人の偽りのない言葉に、千景はしっかりと頷く。
「ありがとうございます。私が出来ることは多くないかもしれませんが、この黄泉を守るために精一杯を尽くします」
「一人で背負いすぎることはないが、千景の身体を取り戻せるのは、きっと千景だけだから、油断せずに行って来い」
はい、と千景は力強く返答した。
「必ずや、体を取り返し、助けに向かいます!」
千景はそう宣言すると、銀の炎のゆらめきと共に外へ向かって洞窟を駆け出して行った。
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