第7話 私のカフェ初出勤

いよいよ初出勤。

といってもさすが大手チェーン。研修のカリキュラムがしっかりしていて初めはお勉強からのスタート。自分より一回りも年下の子達からそれはそれは優しく珈琲の事、ドリンクのレシピ、接客のいろはまで丁寧に教えてもらう。


辛いのはレシピはシフト時間前にきてうつしておかなければいけない事。

ダブルワークの身としては本業の空いた時間にシフトを入れているのでそれ以外の時間というのはないに等しい。

しかしそんな事言える雰囲気ではない。入社したからには時間があろうとなかろうと皆同じ給料なのだ。周りの新人達に取り残されないよう休みの日も出向き必死に勉強した。


学生時代あんなに嫌いだった勉強だが、お金に関わると思うと真剣に取り組めた。

普段の成績は壊滅的だったが、入学受験や資格取得の時など、必要にかられた時だけ必死に勉強して合格してきた事を思い出す。

「今回も私が本気出せばやれるはず」

受験勉強ぶりに単語帳や赤下敷きを持ち出し必死に勉強した。


しかしいくら勉強しても克服できないものがある。極度の緊張である。


接客は15年ぶり、なんならここ数年在宅勤務でほぼ人と会話してない地底人がいきなりオシャレカフェで小粋な接客などできるはずがなかった。


いや、実は自分ではやれているつもりだった。

しかし周りからは見ていられない程緊張していたようで、大学生の先輩に落ち着くように優しく背中をなでてもらったり、引き継ぎ用の連絡帳に「つまめさん緊張しやすいです。落ち着かせてあげてください。」と注意事項が書かれるのを見つけて情けなすぎて涙が出そうだった。


落ち込む私に更なる試練が近づいていた。

オープニングメンバー親睦会である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る