第7話 ロダンの叡慮
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必ずしも人は規則的な過ごし方をするものではない。
ロダンは旅館に戻ると靴に履き替え、首にタオルを巻く様にして自転車に跨り、ここ数日急場のアルバイト先であるガソリンスタンドに向かった。山道を下るその先にガソリンスタンドはある。
ロダンはブレーキをほぼかけることなくガソリンスタンドに滑り込む様に入り込む。
入るこむと若者が数人乗った車が入れ違いに出て行った。
大学生ぐらいだろうか、そんなことを思いながら自転車をガソリンスタンドに停めると、ロダンはスタンドの店内に入ってゆく。
「よう、ロダン君」
四十代ぐらいの顎髭を生やした男が帽子から顔を覗かせてロダンを見て声を掛けた。この人物がここのガソリンスタンドのオーナ——「マサ」さんでありロダンのアルバイトの雇い主である。
このN地域の入り口であり、また情報の担い手ともいえる。このマサさん、平日はこんな山奥のガソリンスタンドで働いているが、週末になれば車を飛ばして日向までサーフィンに行くサーファーだ。サーファーなら海辺でしょ!!と突っ込むロダンに彼は顎髭を撫でながらニヤリとして――そんな奴も一人ぐらいいてもいいんじゃないとロダンに言って笑う。笑うと日焼けした顔から覗く白い歯がロダンには凄く印象的に映った。
そんな彼にロダンは足早に歩きながら挨拶をするとマサさんに声を掛けた。
「あのゥ…マサさん」
「何…ロダン君、神妙な顔つきで」
言いながらロダンに言う。
「いえね…教えて欲しいことがあるんです」
アフロヘアのもじゃもじゃ髪を掻きながら滴る汗をタオルで拭ってロダンが言う。
「何を?」
「…うん」
ロダンは言いながらマサさんを見て言った。
「あのぉ…財前先生の奥さんの事と、それから、ほら…ダムがあるじゃないですか。ここって川が狭くて急流でしょう。若しかして昔、大雨とか水害があったりとかした土地柄なのかなと思いまして」
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