第39話 信玄出現1

 伸虎邸の主殿南側にある広間に並ぶ9つの人影。


 「私、猛陀信茂と申します。本日は、甲非武田家と猛陀家の合同会議でございます。武田家からはご当主である武田伸虎さまと武田四天王の板垣伸方さま、甘利虎安さま、飯富虎正さま、小山田虎光さまに御臨席いただいております」


 猛陀4兄弟の次兄、信茂が会議を仕切る。


 「また猛陀家からは、当主である猛陀信幻、猛陀信圭、猛陀寛介、そして私、猛陀信茂が参席しております。この会議においては、武田家と猛陀家の両家合体についての合議をお願い申し上げます」


 「今、信茂からお話した武田家と猛陀家の合体については、既に伸虎さんにも了解いただいているところだ。伸虎さんよろしいですね」


 「信幻殿のおっしゃるとおりです」


 「おう伸虎さん、名誉あるご了解には感謝している。それでは合体への進め方をオレから提案しよう。結論から言おう。我ら猛陀は甲非武田家に吸収合併される」


 「・・・・・・・・・・」


 「我ら猛陀は、本日をもって解散し、武田伸虎さんに吸収されるってことだ」


 「風兄、いや信幻さま。それでは我ら猛陀は戦わずして敗れ、武田家に吸収されると言われるのですか?」


 「ふっふっふ、信圭よ、その通りだ。今回の両家合体は、伸虎さんの名誉ある了解が一番の功績だ。その功績に敬意を評して、我ら猛陀は武田家に吸収される」


 「・・・・・・・・・・」


 「そしてその後、オレ達猛陀4兄弟は伸虎さんの息子として認めてもらう」


 「我ら4兄弟が伸虎殿の息子に・・・・・」


 「そうだよ。隠し子ってことでどうだい。養子よりはやはり実子がいいだろう。そしてその後、伸虎さんから長子であるこのオレに、家督を引継ぐって訳だ。もちろん伸虎さんには、駿河でのんびり隠居生活を送ってもらおう」


 「信幻さま、では伸虎殿には一切の処分はなし、ということでよろしいのですね」


 「寛介、当たり前だ。オレたちは伸虎さんの息子になるんだ。親父である伸虎さんには、ゆっくりと余生を楽しんでもらいたい」


 「それではもちろん、伸虎殿の関係者にも一切のお咎めなしでよろしいですね」


 「当然だ。それにお父上には今後の生活に不自由がないように、隠居料も毎年お届けしよう」


 「かりにも武田の前当主となれば、それ相応の御心付も必要となりますが?」


 「そうだな毎年400両、いや500両お届けしよう。伸虎さん、いや父上どうかな?」


 「信幻殿には、敗け戦の首謀者ではなく、名誉ある隠居と格段のご配慮かたじけなく存じます。もちろん私には全くの異論も御座いませぬ」

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