第38話 猛陀と武田2
「ふっふっふ嘘などついて何になる。この猛陀信茂が約束しているのだ。嘘をつくくらいなら、あなたの首を既にいただいている。ただしこの甲非の国を譲るに際して、手順を踏みたい」
「手順とは如何なことか?」
「簡単なことよ。我らが甲非の国をいただくだけでは、民の心を掴むまで時間がかかる。そこで、まず我ら猛陀4兄弟をあなたの息子として認知していただきたい」
「猛陀4兄弟が儂の息子となるのか・・・・・」
「我ら猛陀4兄弟の父親だからこそ、隠居後も安穏と過ごせるよう隠居料もお送りできるのだ。あなた自身の今後も、我ら猛陀の後ろ盾があった方が安心できるのではないか?」
「ふーむ、さすれば民の忠誠心も今のままか・・・・・」
「その通りだ。我らも猛陀は仮の名。今後は武田を名乗るつもりだ」
「この武田伸虎が、息子に家督を譲ることになるかのか」
「その通りだ、戦国時代の雄、甲非の虎、武田伸虎は戦に敗れて去るのではなく、息子に家督を譲り隠居するのだ」
「本来は死するところ、猛陀家の重ね重ねの御高配。感謝に耐えない。ご指示のとおりお願いいたしたい」
「おう伸虎さん、いや父上。分かってくれましたか。あなたが条件を飲んてくれるなら、明日にでも、我らの信幻さまが、この武田に入られるつもりだ」
「承知いたした。この武田伸虎、自らが猛陀信幻殿にこの甲非をお湯譲り申し上げたい」
「伸虎殿、いや父上、それでは早速にでも信幻さまにこの旨伝えましょう」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夜空の大きな満月が、武田伸虎の屋敷を明るく照らしている。武田と猛陀の条件合意がなされた翌日の深夜である。
伸虎邸の主殿南側にある広間に9つの人影が並んだ。
上座の4人は猛陀信幻、信茂、信圭、寛介の4兄弟、下座に武田伸虎と武田四天王の板垣伸方、甘利虎安、飯富虎正、小山田虎光である。
また広間に繋がる廊下には、猛陀の林の軍、2番隊隊長と副長、武田の三ツ者の頭、副頭が並び、庭には、三ツ者200人ほどが控えている。
仄暗い広間の中、風介が口火を切った。
「武田伸虎さん、初めてお目にかかる。オレが猛陀信幻だ」
「初めてお目にかかります。武田伸虎でございます」
「おいおい、お見合いやってるんじゃねぇんだ。今日はいわば家族会議みてぇなものだ。肩の力を抜いて本音で気軽に話そうじゃねぇか」
「お館もそう言っております。伸虎殿、それに四天王。正座などせずに胡座に変えて気軽に話をいたしましょう」
猛陀4兄弟の末弟、寛介が一同に声をかけた。
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