第37話 猛陀と武田1

 『歴史の修正』をやってやろうじゃねぇか。信幻いや、風介は考えていた。


 『せっかく時の扉を開いて戦国時代に跳び込んできたんだ。でもよ、こっちの世界は、オレが学校で教えられた戦国時代とは微妙に異なっているんだ。

 

 時の流れが前後しちまっているが、こっちの世界は元の世界の過去かもしれねぇ。ここで史実の差異を直しておかねぇと、後になって歴史が変わっちまうぜ。


 もしかするとこの時代のあちこちをいじって直していけば、オレの元居た時代に戻れるかもしれねぇな。


 まあ、元の世界に戻れる可能性なんか100%ねぇとは思うが。せめてこの世界にオレが生きた足跡を残しておかねぇとな。


 今ここは戦国時代だ。いくらオレがこの世界じゃ超人だからといって、風邪でも引いて死んじまうか分かりゃあしねぇ。いつ逝ってもいいように、何かをやっておこうじゃねぇか。


 オレが山賊の熊を倒し、大泥棒の五郎を倒し、時空の旅人の寛太を仲間に引き入れ、4兄弟の契を結んだ。その頃からかな。オレなりに考えてきたんだ。


 大日本統一を目指して名乗り上げた『猛陀』の姓。オレを4兄弟の長兄として『信幻(しんげん)』、そして次兄は五郎の本名茂治(しげじ)を改め『信茂(のぶしげ)』、三兄の熊は本名の圭吉(かどきち)を変えて『信圭(のぶかど)』とした。


 わかるだろ、オレの考えが・・・・・


 この世界にゃあの戦国の雄、名将の『武田信玄』が存在しねぇんだ。それだけじゃねぇ、信玄の弟たち信繁(のぶしげ)と信廉(のぶかど)も居ねぇんだ。


 だからよ。オレが作ったんだよ。武田信繁は五郎の猛陀信茂、武田信廉は熊の猛陀信圭。そして武田信玄はオレ猛陀信幻だ。


 あとはよ、名軍師の山本勘助も居ねえからオレが作ったんだ。オレと同じ時の旅人の寛太は寛介、とりあえずは、猛陀寛介そのうち山本に変えちまうつもりだ。


 甲非の国の武田家は乗っ取り、オレがいただく。まずは予定通り進んでいるぜ。オレはこの世界じゃ超人だからな・・・・・


 戦国時代の雄、甲非の武田の総大将である武田伸虎を夜討ちで一気に落とした。


 「それで、猛陀が望む条件とは何だ?聞かせてくれんか?死を許すならば、出家か?」


 「我等の総大将はそこらの田舎大名とは異なる。大日本をひとつにまとめる偉大なお方だ。あなたの今後の身の振り方も十分に考えておられる。あなたの友人が治める駿河の国で隠居していただくつもりだ」


 「何と、この儂に隠居生活を許していただけるのか?」


 「もちろん家人も連れて行かれよ。さらには生涯、毎年400両を隠居料として差し上げるつもりだ」


 「毎年400両?本当か?本来なら良くて自決、通常なら首を取られて終わるところ、隠居で毎年400両か?真なのか?」

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