第30話 夜討ち2

 「うちの総大将、猛陀神幻様が大日本を統一するため、先ずはこの甲非の武田伸虎と一戦交えるつもりだ。ただしうちの総大将はできれば、一人でも死者を少なくしたい、そのために戦わずして勝つ戦略を望まれておる」


 「ふむ確かに我ら武田とお主たち猛陀と正面から戦えば、いかに魔人軍といえど、我らは3万人を超える大軍勢と兵力の差があまりにも大きい。我らの勝利はまず間違いない」


 「おいおい、伸方さんよ。我ら猛陀軍を舐めるな。猛陀の全ての兵が1人で100人の敵を倒す。兵力の差など我らに取って意味のなきもの」


 「確かに噂では、お主たち猛陀の者は、1人で何十人もの相手を倒すと聞き及んでいる。真なのか?その強さは?」


 「ふっふっふ、伸方さんよ。確認したいか?試してみたいか?猛陀の強さを?望むならお見せしようか?武田の中でも手練と噂が高い、猛陀お抱えの忍び衆。家人の誰にも知られずここに呼べるか?」


 「武田の三ツ者なら、屋敷内の他の者に知られず直ぐに呼ぶことは可能だが、呼べばお主とたちの命はないぞ。それでも構わぬか?」


 「忍びの100や200、俺一人で十分だ。ただしもし俺たちが買った場合には、我らの側についてもらうぞ。良いのか?」


 「命知らずの猛陀の衆よ。もし本気で三ツ者との戦いを望むなら、その男気に最大限の敬意を示そう」


 「呼べよ伸方さん。ここへ武田自慢の忍び衆を、俺が遊んでやろう」


 「そなた達も良いのか、それで?」


 「寛介様の御心のままに・・・・・」


 4つの声が闇に溶けた。


 板垣伸方が体を起こし、枕元に置かれた小さな木箱を開いた。木箱の中から小笛を取り出し、口元に咥え吹く。通常の人間には聞こえない高周波が流れた。

 

 僅かな時が流れ、寝室の外の闇にいくつもの気配が現れた。


 「お呼びでございますか?」


 虫の音ほどの微かな声が闇に流れた。


 「誰だ?名を名乗れ」


 「三ツ者の富田郷右衛門でございます」


 「おう頭の郷右衛門か、そこに何人の配下がいる?」


 「緊急の呼び笛。直ぐに集まれる者28人ほどは控えております」


 「分かった。今しばらく、そのまま控えておれ」


 「畏まりましてございます」


 「三ツ者を呼んだが、どちらでお手合わせいただけるのか?」


 「屋敷の庭の鍛錬場なら、家人にも気づかれることがないだろう。どうだいそこで?」


 「了解した。儂はどうすればよい?」


 「我らがお連れいたそう」


 「郷右衛門、鍛錬場へ全員移動せよ。なお、くれぐれも儂の指示以外、勝手な言動は厳に控えろ、よいか?」


 「鍛錬場に移動いたします」


 闇の中枯れ葉が落ちるほどの音さえ立たず、夜風のように無数の気配が動いた・・・・・

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