第27話 猛陀動く1

 「おう信幻さま、武田に夜討ちですか?そいつは面白い」


 「おーっ夜討ちか、さすがは風兄。そりゃあすげえな」


 武田への奇襲、夜討ちの一言で、車座に座り込んだ全員に熱い気迫が走る。もちろん林の軍団の4人も無言ではあるが、ギラリと目が光る。目の奥に赤い炎が燃え上がったようだ。


 「信茂兄も、信圭兄も夜討ちは得意中の得意のはず。この寛介もお二人に劣らぬ働きはお見せするつもりです。もちろんお館さまは魔神さまですから、我々など比べようもないお力をおもちのはず」


 「そうだな、俺たち猛陀軍は、もともとは風の魔人軍団だ。風林火山4軍の各隊長、副長も飛び抜けた身体能力の野郎はかりだ。闇に紛れて動けば敵なしってところだ」


 「しかし信幻さま、武田軍にもお抱えの忍びもいると思われますが。お前たち武田では忍びの動きは掴めなかったか?」


 「信茂さまに申し上げます。実際に目にした訳ではございませぬが、武田は『三ツ者』と呼ばれる忍びを使い、他国の情報収集にも余念がないとのことでございます」


 「お館さま、この戦国時代、どの大名もスパイ活動は当然のこと。近くでは相模原の国の北条軍には、我らの猛陀軍と同じ風魔の者が周りを固めている筈。又兵衛、そうであったな」


 「寛介さまの仰る通り、相模原の北条には、我らが風魔の同族が雇われております。もちろん同族といえど、現在は敵同士でございますが」


 「又兵衛、どうだい。お前たちの能力と武田や北条の忍者たちの能力の比較は?」


 「お館さまに申し上げます。我ら風魔の者がお館さまに初めてお仕えした頃なら、敵の忍者たちとはほぼ互角。しかしその後信茂さまや信圭さま、寛介さまに鍛錬いただきました今では、我ら猛陀忍者は最強と自負しております」


 「又兵衛よく言った。信圭、寛介、そしてこの信茂が鍛えたお前たち。あの頃のお前たちとは数段力が違う。我ら猛陀軍が誇る最強の戦士たちだ」


 「信茂さま、もったいないお言葉ありがとうございます。更に精進に努めてまいります」


 「それでよ、夜討ちかけるにしても、直に伸虎の処にかち込むか、それとも先に脈がありそうな有力家臣の処に乗り込むか、どうする信茂?」


 「もし武田内部で伸虎に不満がある者がいるなら、先ずはその者を味方に取り込み、敵情を探りながら確実に伸虎を叩くべきと存じますが」


 「茂兄が言うなら、俺は異論はない」


 「信圭も信茂の意見に賛成か、寛介はどうだい?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る