第25話 素っ破抜く1

 風林火山の4軍団は全て、1番隊から5番隊まで20人ずつの5部隊で編成されている。


 各部隊は隊長と副長が統率し、4軍で20人の隊長と20人の副長は全て、軍団創設時に集めた風魔一族などの超人的な身体能力を有する者たちが担っている。


 敵情調査のため、寛介の林の軍団の中から腕が立つ者4人を素破として選出し、伸虎の本拠地であるひつじが崎に飛ばした。


 3日後の暗い空に満月が浮かぶ深夜であった。人さえ通えぬ山奥深い森林の中に、異様な建物が40棟ほど並んでいる。


 まるで丸太を組建てたログハウスだ。建物が2重の円陣を組むように並んでいる。その2重の円陣の中心に、風介が棲む『お屋形』と呼ばれるやや大きな建物が淡い月明かりを浴びている。


 お屋形の内部、風介の部屋の前に、いつくかの人影が並んだ。


 「信幻さま、失礼いたします。まだ起きていらっしゃいますか?」


 部屋のドア代わりにぶら下げた墨染めの布の前で、信茂が中に声をかけた。


 「おう信茂か?中に入って来いや」


 墨染めの布を揺らしながら、信茂、信圭、寛介と続き、更に4人の兵の顔が並ぶ。


 「おう、伸虎んとこに送り込んだ素破の兄ちゃんたちか、無事に帰ったのかい。ご苦労だったな、立ってねぇで、みんな座れ」


 部屋の真ん中、大名屋敷からの戦利品である高価な敷物の上に、風介と3兄弟たちが胡座をかいて座り込む。流石に兵の4人は入口近くに正座したままである。


 「兄ちゃんたちも、遠慮しねぇでこっちに来いや。伸虎のところの話を聞きてぇんだ」


 「お館さまがそう仰ってる。お前たち、遠慮しないでこっちに座りなさい」


 髭などたくわえ、それなりの貫禄を身に着けてきた寛介に声をかけられて、4人も加わり風介を中心とした車座に並び座り込んだ。


 「どうでぇ、伸虎んところの兵隊の状況は?何か面白れぇ情報があったかい?遠慮なく話してくれ」


 「お館さまから遠慮なくとのことだ。見てきたこと、聞いてきた話や噂、細かいことでも構わないから何でも報告しなさい」


 寛介の声かけに、信茂、信圭も目を光らせぐっと体を乗り出した。


 4人のうちのひとりが口火を切り、続いて3人が口を開いた。


 「お館さま、林の2番隊隊長、風間又兵衛でございます」

 「同じく2番隊副長、風摩新八でございます」

 「3番隊隊長、風真甚吉でございます」

 「同じく3番隊副長、風間石丸でございます」


 「おう、寛介のところの精鋭だな。2番隊と3番隊の隊長と副長さんか。それで、どんな具合なんだい、あちらさんはよ」

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