第21話 風魔軍1
可愛いお姉ちゃん、木卓に料理を並べて戻る時に、すっと小さく畳んた紙をさり気なく渡してきた。
木卓の下で、畳まれた紙を開くと・・・・・
『今度誘っておくれよ。お鈴』
おい、おい、可愛いお鈴ちゃん、色男に付け文かよ。
飯を食ってる間も、仕事の合間を縫ってチラチラ目線が飛んでくる。可愛いもんだぜ。
勘定を済ませ茶屋を出る。店の外まで追いかけて来たお鈴ちゃんが、俺の右腕を掴んで小さく声をかけた。
「兄さん、ねぇ名前を教えておくれよ」
「風介だ、鈴ちゃん、近く居るから、また遊びに来るぜ」
お鈴に掴まれた右腕を回して軽く抱きしめ、お鈴のまぁるいお尻を軽く撫で上げた。
「もう、風さんったら遊び人なんだから」
嬉しそうに俺の腰に手を回して、甘い薫りをさせる柔らかな体を擦り寄せる。軽く抱きしめたまま、可愛いお尻をグッと握りしめる。空いた左手は、お鈴の思いの外大きな胸を軽く掴む。
甘えるお鈴を何とか引き離して、茂治の長屋に帰り暫くひと眠り。深夜までぐっすり眠り込んでしまったようだ。引戸の外から聞こえる声に、ようやく目を覚ました。
「こんばんわ」 寛太の声だ。
「おぅ寛太か、遠慮しねぇで入ってこいよ」
引戸を開けて入る際に、土間に横たわる黒介に慌てて外に逃げ出した。
「寛太、大丈夫だ。コイツは俺の仲間だから食いつきやしねぇよ」
「風介さん、な、なんですかこの狼は? こんな狼まで飼ってるんですか?」
「ふっふふふ、寛太よ、こいつは俺の義兄弟の子どもみてぇなものだ。賢いやつだから俺の話も俺の気持ちもしっかりと理解してる。お前を仲間だとちゃんと分かっているさ」
何とか気持ちを抑えて、座敷に上がり込んだものの、やはり気になるのか黒介のことをチラチラ様子見てるぜ。
腕時計をながめるともう1時20分ほど過ぎている。そろそろ圭の家まで出かけるとするか。
俺が立ち上がると、黒介も分かっているように立ち上がった。寛太に声をかけて引戸を開けて深夜の町に繰り出して行く。
「寛太、お前もそこそこの疾駆けはできるだろう?ちょっと疾走ってみねぇか?」
「風介さん、了解です。俺の能力も見極めておいていただかないと、これからのためにもお役に立てませんからね」
「ふっふふふ、分かっているさ。じゃあ黒よ、ちょっぴり疾駆けといこうぜ」
黒介に声をかけると、当然理解したように突然スピードを上げた。深夜の月明かりに淡く照らされた町並みが、草原が、森が後ろに跳んでいく。
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