第20話 超人参入2

 寛太はどうやらあっちの世界では、か弱くて情けねえほどのイジメられっ子だったが、こっちの世界では、俺同様にまるで超人みてえにパワーアップしたようだ。


 話の内容では、もちろん俺ほどじゃあねえが、茂や熊レベル以上の力は十分に持ち合わせてるようだ。


 イジメられっ子で不登校、自分の部屋に閉じこもって毎日ゲーム三昧。その戦国時代シュミレーションゲームの世界から、こっちの世界に飛び込んで来ちまったようだ。


 ゲームの中でも、時の扉が開く場合があるんだな。まぁこの町で寛太と出会えて良かったのかもしれねぇな。寛太も風軍団のメンバーに自ら飛び込んで来やがった。


 もちろん丑の刻の集合時間の前に、茂治の家に訪ねて来るように話はしておいた。


 別れたがらねぇ寛太に何とか見切りをつけて、茂治の家に戻った。黒介には土産に買った猪肉を放り投げると、よほど腹を空かせていたらしく、あっという間に平らげた。


 まだ夕方の16時前だ。夜中の2時までは10時間もある。寝るにしても長過ぎる。小腹が減ってきたので何か食いに出かけるか。


 満腹になって眠りについた黒介を残して外に出る。まだ16時位なのにまるで秋のような夕陽が町を赤く照らしている。


 食う場所が分からないので、先程のほうとうを食っためし処に向かった。昼飯の時間を過ぎたせいか客はほとんどいねぇようだ。


 「あら、色男。看板娘のアタシに会いたくて、また訪ねて来たのかい?」


 さっきの可愛い姉ちゃんが、嬉しそうに声をかけてくる。参ったな、惚れられちゃったかもしれねぇな。


 茶屋には手伝いの若い姉ちゃんたちが3人。みんななかなかの美女さんだが、俺に声をかけてきたこの姉ちゃんが一番可愛い。


 「色男、何を食べるんだい?」


 注文を取りに来るのに、俺の背中にぷりんとした胸を押し付けて来るのは困ったものだ。


 笑いながら振り向いて、他の客に聞こえねぇような小さな声で、姉ちゃんの耳に囁いた。


 「本当は姉ちゃんを食いてぇんだ」


 指先から耳まで真っ赤になって、さらに体を擦り寄せる姉ちゃんに、今度はでかい声で声をかける。


 「何か美味いもんねえかぃ?」


 「猪肉か焼き鮭はどう?とっても美味しいよ」


 「おう、じゃあその揚物、焼き鮭の、それに大盛りの飯と味噌椀頼むぜ」


 「あいよ!」


 他の客がほとんどいねぇのを良い事にウィンクしてるぜ。まったく可愛い姉ちゃんだぜ。


 大きなお盆に猪肉、焼き鮭、大盛りの玄米飯、そして味噌椀と注文のすべてを載せて、運んで来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る