第19話 超人参入1

 「おめぇはこっちにいつ飛び込んで来た?」


 「ボクは2003年にこちらの世界に。あなたはいつこちらに?」


 「俺は2020年だ。じゃあおめぇはこの世界にもう17年も生きてるって訳か?そいつはすげぇな。歳は幾つなんでぇ?名前は?」


「あちらの世界から飛び込んで来た時は16歳でした。だから今は33歳のはずですが。元々老けて見られていたけど、この世界ではあまり歳をとらないみたいです。名前は寛太(かんた)です」


「ふぅーん、確かにまだ20歳そこそこにしか見えねぇな。もう33歳か。寛太(かんた)おめぇ、今は何して暮らしてるんだ?」


 「実はこの町で塾を開いて、子どもたちに勉強を教えています。昔覚えた歴史や国語の知識が役に立ってるみたいです。それで何とか生活しています」


 少し安心したのか、寛太の顔にもやっと笑顔が浮かんだ。若えのにたった一人きりで、この世界で苦労しながら生きてきたんだろう。


 どんな理由でこの世界に飛び込んできたのか分からねえが、奇跡的に元の世界の人間に出会えて、懐かしくてたまらないようだ。


 「先生、こんにちは!いつも家の子がお世話になっています」


 小さな子供連れの若い母親が挨拶してきた。そういえばこの道を行き交う人々の中には、この男に軽く会釈していく者もちらほら見かける。塾の先生っていうのも、どうやら本当らしいな。


 「失礼とは思いますが、お兄さんのお名前を、是非教えていただけませんか?」


 「ふっふふふ、俺の名かい。俺は『風介』、ただの風来坊だよ」


 「風介さんですか!しっかし嬉しいですよ。もう二度とあちらの世界の人間に会えるなんて考えてもみなかったから・・・・・」


 「寛太、おめぇ、今は独り暮らしかい?それとも可愛いお姉ちゃんともう所帯でももってるのかい?」


 「いやいや、まだ独り暮らしです。塾の先生なんて大したお金も稼いでいない貧乏人なので、こ汚い長屋暮らしをしています。まあ近所の皆さんのお世話になりながらですが」


 「寛太、せっかく会えたんだ。ちょぃと話がしてぇんだが、時間は取れるかい?」


 「もちろんですとも!ここでこのまま別れたら、もう二度と会えないかもしれない。家に来て是非とも話を聞かせてください」


 寛太の家までは、歩いて5分ほどの距離だった。茂治の長屋と変わりもしねぇ間取りだ。


 客の俺にお茶さえ出さねぇまんま、話に夢中になって1時間ほど過ごした。まあ、別世界の客人だ、興奮してもしょうがねぇか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る