第18話 時の旅人2
腹っぺらしの俺の胃の中に、あっという間に消えるうどん。周りを見ると、他の客もおかわりし放題の状態だ。
確か戦国時代の頃は2食で、特に昼飯は雑炊や玄米飯を5杯位は当たり前に食らっていた、みてぇな記事を読んだ記憶がある。
俺も敗けずにほうとうを5杯程、胃の中に流し込んで、しきりと色目を使うめし処の可愛い姉ちゃんの目線を後に店を出る。
黒介にも、何か食い物を持って帰らねぇといけねぇな。
道端に猟師らしい小汚え格好をした野郎が、猪肉をゴザの上に広げているのを見かけ、縄で縛り吊るしたでかい塊を買い込んだ。金はいくらでもあるからな。
猪肉をぶら下げながら、来た道をぶらぶら戻る。もちろん行き交う人間さまたちの観察はきっちりこなしながら・・・・・
おっ、アイツは何だ? 何者だ?
3mほど前を歩く男の姿が目に付いた。
何か腕元をのぞき込んでいる。その姿がまるで時計をのぞき込んでいるように見えた。急いで男を追い抜き、相手に気づかれないように、さり気なく振り向き確認する。
まだ20代中程位だろうか。この時代の野郎にしちゃ妙に垢抜けしている。やはり時々腕元をのぞき込む。
歩くのを止めて男の前に立つ。突然、目の前に俺が立ち塞がったので、思わず俺の胸にぶち当たった。
「あっ、すいません!」
「おう、兄ちゃん、ちょぃといいかな? 話がしてぇんだけどな」
「な、なんでしょうか?」
ビクつきながら俺の顔をのぞき込んだ。気が小さそうな野郎だな。
「ちょぃと腕を見せてくれねぇか?」
有無を言わさず男の左手をぐっと掴み、腕を確認する。おい、おい、やっぱ腕時計してやがるぜ。しかもダイバーズウォッチだ。
「兄ちゃん、随分良いもの身につけてるじゃねぇか。これはどこで手に入れたんだぃ」
「いやこれは、私が自分で作った機械で刻を刻む機械です」
「おめぇが自分で作れるわけねぇだろ。しかもダイバーズウォッチだぜ」
「何を言われているか、分かりかねますが」
「とぼけんな。もしかするとおめぇも『時の旅人』か?」
「えっ、『時の旅人』って・・・・・」
明らかに動揺していた男の目の前に、左腕を突き出した。左腕には俺の自慢のコレクション、コルムの腕時計、バブルのジョリーロジャーが得意気に煌めいている。
「あっ、あなたは・・・・・?」
「おめぇと同じ『時の旅人』だ。別世界からこの世界に飛び込んで来たって訳だ」
「信じられない。ボク以外に別の世界から飛び込んで来た人がいたなんて!」
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