第17話 時の旅人1
俺と黒介は一緒にお留守番だ。黒介がいねぇと圭吉のヤサまではたどり着けねえからな。俺は茂のヤサでもう一眠りと決め込んだ。
昼過ぎには目を覚した。時計は1時ちょぃと過ぎている。さすがに日中に狼の黒介を連れて歩けねぇんで、ヤサに残してひとり町中をお散歩だ。
あちらの時代から着込んできた真赤なTシャツと迷彩の半ズボンは、ちょぃと目立ち過ぎるので、茂治からもらった粋な漆黒の着流しに雪駄をつっかけて外に出た。
腹が減ったんで昼飯を食いたい。金はもちろん茂の戦利品から遠慮なく拝借した。俺たちは兄弟だからな。
町中をぶらつく。行き交う若い姉ちゃんたちに、つい目を取られちまうのは、悲しい男の性だ、まあ許してくんねぇ。
顔が長くて、目が細く切れ長な浮世絵みてぇな女衆を予想していたが、いやいやどうして目鼻立ちがハッキリした可愛い姉ちゃんがほとんどだ。
スタイルも胴長短足、胸は洗濯板と勝手に確信していたが、とんでもねぇ。俺のいた時代よりも、よっぽどスタイルも良いし、単の着物を押し上げる胸のデカさも、なかなかのもので一安心したぜ。
姉ちゃんたちに見とれながら町をぶらつく。やっと見かけためし処に飛び込んだ。
腕時計は間もなく2時を指している。この時代は確か1日2食、朝の8時に朝食、そして午後の2時に昼食。夜食はねぇ時代のはずだ。
昼にたっぷりと食いまくって、夜は寝るだけなんて、つまらねぇ時代だぜ、まったく。
めし処に入ったものの、はてさて何を頼んでいいのか、全くわからねぇ。周りを見回す。
雑炊らしい食い物を丼で流し込んでいるヤツ、おにぎりみてぇなものを口に放り込んでいるヤツ、うどんもどうやらあるみてぇだ。
「粋な兄さん、何になさる?」
まだやっと10代後半位の若い姉ちゃんが声をかけてきた。美少女と言うよりもう既に大人の色気を感じるのは、やはりこっちの世界のせいだろうか?
「そうだな、うどんを頼まぁ」
「うどん?ほうとうのことかい?兄さんここらの人間じゃないみたいだね」
「おう、そうかここは山梨、ほうとうがあったな。よし、姉ちゃんみてぇにとびきり美味そうなやつを頼むぜ」
「冗談止めとくれよ。信じちまったら責任取ってもらうよ!」
二重瞼の色っぽい流し目。おいおい、こっちの方が参っちゃうぜ。多分寿命が短いせいか成長も早えのかもしれねぇな・・・・・
間もなく美味そうな味噌の香りを漂わせたほうとうが、粗末な木卓に置かれた。カボチャが混じった汁に、太めの麺がたっぷりと浸っている。
啜り上げると、こいつぁイケる。煮込まれて柔らかくなった麺が良い味出してるぜ。
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