第15話 風軍団1

 時の扉を開いてまだ2日目。昨夜はいろんな事件が起こり、多少疲れたせいか、数時間だと思うがぐっすり眠り込んだみてぇだ。


 熊に五郎、あっという間に子分が2人できたが、俺の見る目が間違っていなければ、なかなか骨がある漢たちみてぇだ。


 「親分」「親分」ってうるさく騒がれるのが、なんか照れくさくってさ、3人で改めて義兄弟として固めの盃を交したんだ。


 俺が長兄、五郎が次兄、そして熊、と新たな仲間ができた。もちろんイヌコロも仲間に入れたよ。さすがに兄弟にはなれねえけどな。


 それからもう1つ。実は五郎に熊、2人の名前は盗人の通り名で、本名じゃなかったんだ。


 五郎は『茂治(しげじ)』、熊は『圭吉(かどきち)』が本名だっていうから、これを機会に本名で呼ぶことにした。


 イヌコロもあんまり粋な名前じゃねぇので、黒い狼に風介の1文字を入れて『黒介(くろすけ)』と改名。賢い野郎だ、新しい名前を呼んだら、嬉しそうに喉を鳴らした。


 それから俺のことは、『風兄(かぜにい)』『風介兄貴』と呼ばせることにした。3兄弟で『風軍団』の立上げ完了だ。さあこれからひと暴れするぜ!


 今朝は猪肉に雑穀の鍋、大根の漬け物に梅干と山盛りの玄米と、この時代にしちゃあご馳走らしい。黒介には生の猪肉の塊だ。


 使い切れねえくらいの金子があるのに、本当は分厚いステーキでも食いたかったが、まあ時代が時代だからしょうがねぇか。


 熊、いや圭吉(かどきち)が朝早くからデカイ体をマメに動かして、朝飯の準備をしてくれたらしい。


 さて、飛び込んできたこの世界で、これから何をやるのか、茂(しげ)に圭(かど)に黒(くろ)と、最強の仲間ができたんで考えなくちゃいけねえな。


 たっぷりの朝飯を平らげた後なんで、眠くてしようがねぇが、茂が真面目に仕切るから眠るわけにもいかねぇな・・・・・


 「じゃあ親分、いや兄貴、それから圭、これから俺ら風軍団はどうするか。決めていこうじゃねぇか」


 「風兄に、茂兄。甲非一番の盗賊、関東いや大日本(やまと)一番の盗賊なんかどうだろう。俺ら3人と黒介がいれば十分にできると思うんだが」


 「圭よ、確かに風兄と俺達なら、大日本一の盗賊にはなれそうだな」


 「おい、茂に圭、大日本一の盗賊はなかなかでけぇ夢だが、どうせ盗賊をやるなら金子を盗むよりも、国を盗むってのはどうでぃ、俺ら風軍団が全ての国を盗んで統一し、大日本の大将になるなんて夢は?」


 「さすがに兄貴は魔人さまだ。俺ら半端者とは懐の広さが違う。風軍団で大日本の大将になるか、なあ圭よ、すげぇ夢じゃねぇか」

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