第5話 化物1
猛烈に腹が減ってきたんで、なんとか食い物を探さねえといけねぇな。とりあえずは、あのあばら家の中を覗いてみるか。
あばら家の入口らしい壊れそうな引き戸のそばで聞き耳を立てる。何となく人の気配はあるようだ。隙間だらけの引き戸から、そっと中をのぞきこんだ。
何かの油を燃やしているような匂いがする。動物の油を燃やして点す弱い灯りが、暗い部屋の中をぼんやりと照らしている。
ちっ、薄暗くてよくは見えねえけど、間違いなく誰かが寝てるようだ。しかもまるで恐竜でも寝てるような鼾が聞こえるぜ。
しっかし参ったな、腹が減って我慢がならねえ。この世界じゃあるかどうかは分からねえが、カップ麺でもいいから何か食い物がねえかな。ほんの少しでもいいからよ・・・・・
「ぐうっ」
腹が鳴りやがった。しかもバカでかい音で。
「誰だっ!」
おっとヤバいぜ。気付かれちゃったぜ。
「誰だっ! 返事しねえか!」
雷のようなバカでかい声が響き渡る。ボロ小屋の中で巨大な影がむっくりと起き上がった。
誰だって言われても、相手が誰だかわからねえし、こっちもどう名乗っていいのかわからねえ。とりあえず相手の出方をみるか。
巨大な影が起き上がり、ゆっくりと引き戸に向かってくる。二三歩下がって待つことにした。ガラッと引き戸が開けられ、影が外に踏み出した。
淡い月明かりが巨大な影を照らす。200cmはゆうにあるかもしれねえな、まるで熊のような野郎だ。体重も180㎏はありそうだ。髪は長く獣のような剛毛を後ろにひとつにまとめている。顔は髭だらけ、まさしく熊男だ。
「誰だ、てめえは?」
耳が痛くなるようなバカでかい声だ。しょうがねえ、黙っていても始まらねえから名乗ることにした。
「風介だ!」
「ふうすけ、だと。野郎のくせにおかしな格好しやがって、てめぇ何しに来やがった?」
熊野郎、俺の赤のTシャツに迷彩のハーフパンツ姿にビビってやがるな。髭面の中で凶暴そうな目が光る。しかも右手にどでかい鉈まで持ってやがるぜ。
「バカ野郎が、わざわざ自分から物を盗られに来やがったのか。命が惜しかったら、身ぐるみ脱いで置いていけ」
笑わせるんじゃねえぞ。俺もあっちの世界じゃあゴロまいて遅れをとったことなぞ一度もねえんだ。熊野郎が鉈なんか持ち出しやがって、やる気ならきっちりお相手してやるぜ。
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