第81話 実食

「それでは、審査員の皆様をご紹介いたしましょう! まずは審査委員長の、その辺で見つけたおじいさんです!」


 司会者が仙人のような老人の方に、手のひらを向けながらそう言った。


 なんじゃそりゃぁっ!?

 有名な料理人とか、美食家とかじゃないのかよ!?


「それでは、ひと言ご挨拶をいただきたいと思います」


「わしゃぁ、かすみしか食わんぞ!」


「ありがとうございました!」


 おい、こら、何言ってんだよ!?

 これからソース料理とマヨネーズ料理を食べるんだぞ!?



「あとは、その辺にいた人たちです!」


 なんだその雑な紹介は!?


 結局、全員その辺にいた人じゃねぇかよ!?


 どうなってんだよ、このイベントは!?



「では、次は選手の方々にも、ひと言いただきましょう。まずは『そーっすね』の料理長、お願いします!」


「マヨネーズなぞ、所詮はソースの一種にすぎん。すべてのソースを操る我らの敵ではない。キミすアブラなぞ、店ごと粉砕してくれるわ!!」


 『塩コショウ派』と書いてある前掛けを着用している人が、そう言った。


 そんな前掛けをして、何を言っているんだよ!?


 あと、料理勝負だからな!?


 店を粉砕するなよ!?


「ありがとうございました。では、次は『キミすアブラ』の料理長、お願いします」


「ヤツらを皆殺しにし、マヨネーズの材料にしてくれるわ!!」


 『味噌みそラーメン派』と書いてある前掛けを着用している中年男性が、そう言った。


 怖っ!?

 何言ってんだ、あいつ!?


 あっ、もしかして、あいつはモンスターなのか!?


 なら、別に不自然ではないな。


 ところで、人間でマヨネーズって作れるのか!?


 無理なんじゃないか!?


 いや、どうなんだろう?


 まあ、どうでもいいか!!



「それでは、ルールを説明します。選手の皆様には制限時間一時間以内に、三品の料理を作っていただきます。その後、審査員の皆様に料理を食べていただき、どちらが美味しかったか投票していただきます。得票数の多かった方の勝利となります」


 そうなのか。

 なんか普通に料理対決だな。


 残虐ざんぎゃくとか、闇黒あんこくとかは、どこ行ったんだ?


 まあ、どうでもいいか。



「それでは、残虐ざんぎゃく闇黒あんこく料理決闘りょうりデュエルスタートです!!」


 司会の方がそう言った直後、店の人たちがいっせいに調理を始めた。


 おおっ、さすがはプロだな!!


 見事な手際だ!!


 それに、なんだか良い匂いがしてきたな!!


 腹が減ってきたぞ!



「良い匂い! 美味しそうね!」


「ええ、お腹がすいてきてしまいますね」


「まったくもってその通りですわねぇ」

「ええ、とっても美味しそうですわァ」


 シルゥーカとセゼネーキが、俺の方を見ながらそう言った。


「おい、なんで俺の方を見ているんだよ!?」


「とっても美味しそうだからですわぁ」

「ダァンサービオ様、なめても良いですかァ?」


「お前らは何を言っているんだ!? 試合を見てろ!?」


「ええ~、ダァンサービオ様の方が気になりますわぁ」

「味を確かめたいですわァ」


「試合を見てろっての!!」


「では、後程、じっくりと味わわせていただきますわぁ」

「楽しみですわねェ」


「うるせぇぞ、変態!?」


「そうでござる! 色狂い送りおおかみをなめるのは、賢者さんでござる!!」


 賢者レーロナネ・ウーマヒグがそう言った。


「あたしもペロペロしたいわぁ」


 悪魔トーネベワ・ガコホゲスがそう言った。


 こっちの変態どももうるせぇぞ!!


 黙って試合を見ていろ!



「はい、どうやら料理が完成したようです! それでは、実食と参りましょう! まずは『キミすアブラ』の料理からです!!」


 審査員の前に、料理の盛られた皿が置かれた。


 どの料理もマヨネーズが山盛りだ。


 見た目だけでは、どんな料理なのか分からないな。



 審査員が料理を食べ始めた。


 仙人っぽいじいさんも普通に食べている。


 かすみ以外も食うのかよ!?


 えっ!?

 『そーっすね』の人たちと司会者まで料理を食べているぞ!?


 なんで君らまで食べているんだよ!?


 まあ、どうでもいいか!!



 全員、料理を完食したようだ。


「それでは、審査員の皆様にひと言感想をいただきましょう。お願いします」


「うまかったです」

「うまかったです」

「うまかったですわ」

「うまかったわ」

「うまかったです」


 おい、こら!?

 もっと言うことないのかよ!?


 お前ら、語彙力、低すぎないか!?



「続いて『そーっすね』の料理の実食です!!」


 審査員の前に、料理の盛られた皿が置かれた。


 あれはスープ料理に、ハンバーグに、ボロネーゼかな?



 審査員が料理を食べ始めた。


 『キミすアブラ』の人たちと司会者まで料理を食べている。


 もしかして、対戦相手の料理を食べなければいけないのか?


 そういうルールなのか?


 まあ、どうでもいいか。



「うぐっ!?」

「な、なんだこれは!?」

「ぐああああああああああああああああっ!!!!!」

「ぎゃあああああああああああああああっ!!!!!」

「こ、これはまさか!?」

「あ、ああ、あああああ……」

「ぬわあああああああああああああああっ!!!!!」

「うげっ、がああああああああああああっ!!!!!」

「うがががががああああああ……」

「おぐっ!? うごっ!?」

「がはっ!? がぁっ!?」

「あああああああああああああああああっ!!!!!」

「うぎょっぎょっぎょっ!?!?」


 な、なんだ!?

 キミすアブラの人たち、司会者、審査員の人たちが苦しみ出したぞ!?


 まさか食中毒か!?


 いや、これはもしかして、聖塩ネオフホテグジオの効果なのか!?


 なら、あいつらは全員モンスターなのか!?

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