第14話 黒いお父さん

 履歴書に書いてあるのは、これだけみたいだ。


「レベルとか、攻撃力とかはないんだな」


「レベル? 攻撃力? それはなんでアリマスか?」


「何って、ええと、強さを数値にしたものかな?」


「そんなものはないでアリマス。そもそもどうやって数値化するのか、よく分からないでアリマス」


「まあ、確かにそうだな」


 攻撃力と言われても、具体的になんなのか、よく分からないしな。



 あれ?

 そういえば、周囲が暗くなってきたな。


 もしかして、日が沈んでいるのか?


 ここにも昼夜があるんだな。


 では、カーテンを閉めて、電灯をけようか。


 そういえば、電灯のスイッチはどこにあるのだろう?


 あっ、ドアの近くにある、あれかな?


 俺はスイッチと思われるものを切り替えてみた。


 おっ、いた。


 これで正解だったようだ。


 ここにも電気はあるんだな。



 ん?

 ドアがノックされているぞ。


 肝っ玉母さんか?


 俺はドアを開けた。


 そこには、変態が立っていた。


 頭部がちょうど隠れるくらいの大きさの、黒い直方体のマスクをかぶっている。

 紺色のスーツ、ブラウンのネクタイを着用。

 中肉長身で男性体型。


 このような姿をしている。


 な、なんだこいつは!?


「ただいま、ダァンサービオ。飯ができたぞ」


 黒いマスクの変態がそう言った。

 男性のような低い声だ。


「あ、ああ、おかえり。分かったよ」


「早く下りて来いよ」


 黒いマスクの変態がそう言って、去って行った。


 あれはなんだったんだ?


 あっ、もしかして、あいつがダァンサービオ君のお父さんなのかな?


 その可能性が高そうだな。


 夫婦そろって、妙な格好だな。


 もしかして、似た者夫婦ってヤツなのかな?


 まあ、そんなのはどうでもいいか。


 飯を食いに行こう。



 ダイニングキッチンにやって来た。


 テーブルの上には、デミグラスソースのようなものがかかったオムライスのようなものと、野菜の入った白っぽいスープ、サラダが四人分置いてあった。


 あれが夕食か。


 また日本にありそうな料理が出てきたなぁ。


 肝っ玉母さんと黒マスク父さんは、椅子に座っている。


「来たのね、ダァンサービオ。ほら、座りなさい」


 肝っ玉母さんがそう言った。


「ああ、分かったよ。ところで、ひとり分、多いようだけど、これは?」


「それはあんたのステータス屋の分よ」


「ああ、わざわざ用意してくれたのか。ありがとう」


「出しちゃった以上は仕方ないからね」



「なんだステータス屋を出してしまったのか」


 黒マスク父さんがそう言った。


「そうなのよ。お父さん、私たち注意したわよね?」


「ええと、どうだっけ?」


「俺はされた覚えはないよ」


「そうだったか? なんか注意したような気もするんだけど、しなかったっけ、母さん?」


「忘れちゃったわよ」


「まあ、今更言っても仕方ないか。しっかり面倒見ろよ、ダァンサービオ」


「ああ、分かったよ」


「では、冷めないうちに、食べようか。いただきます」


「「いただきます」」



 そういえば、黒マスク父さんと肝っ玉母さんは、どうやって食べるのだろうか?


 ふたりともマスクのせいで、顔が完全に隠れているからな。


 あっ、ふたりともマスクを外した。


 食べる時は外すのか。


 おおっ、ふたりとも、ものすごく若くて美形だな。


 それにダァンサービオ君に似ている。


 髪の色も同じ銀色だし。


 遺伝子がキチンと仕事をしたようだな。



 アルヴェリュードさんに料理を渡した。


 そういえば、ステータス屋の面々を黒マスク父さんたちに紹介していなかったな。


 しておこうか。


 ステータス屋の面々を紹介した。



 完食した。


 どれも日本にあるものと同じような味、食感、香りだったな。


「ダァンサービオ、お風呂沸いているから、食休みしたら入りなさい」


「ああ、分かったよ」


 では、部屋に戻るか。



 部屋に戻って来た。


 風呂に入るなら、着替えとバスタオルが必要だな。


 どこにあるのだろうか?

 タンスかな?


 俺はタンスを調べてみた。


 ああ、あったあった。

 タンスから寝巻きとバスタオルを取り出した。


「お風呂でござるか…… 実に楽しみでござるな!」


 賢者レーロナネ・ウーマヒグがそう言った。


「おい、変態賢者!? 何が楽しみなんだよ!?」


「もちろん、すべてでござるよ」


「こいつなんとかできないのかよっ!?」


「聖女として、成敗したいところですが、残念ながら、どうにもなりません。申し訳ありません」


 聖女マユメ・アイ・コトリハがそう言った。


「いや、謝る必要はないよ。マユメは悪くないしな」


「ステータス屋の件で、ご迷惑をおかけしたので、何かおびをしたかったのですが、お役に立てず申し訳ありません」


「えっ!? それを気にしていたのか!? それはマユメのせいじゃないよ! ステータス屋を呼んだのは俺なんだしな!」


「お気遣いありがとうございます。しかし、おびは必ずします」


 真面目だなぁ。



「話は済んだでござるか? では、お風呂に行くでござる!」


「この変態賢者めっ!?」


「もう諦めるしかないわよぉ、究極超獣きゅうきょくちょうけだものちゃん。さっさと入ってしまいましょうよぉ」


 悪魔トーネベワ・ガコホゲスがそう言った。


 おのれっ、それしかないのかよっ!?


 クソッタレがっ!!



 俺は仕方なく風呂に入った。


 ここの風呂も日本のものと同じような感じなんだな。


 湯船があって、シャワーもある。


 当然お湯も出るようだ。


 これはありがたいな。



 風呂から上がり、ついでに歯も磨き、部屋に戻って来た。


「いやあ、絶景でござった!」


「うるさいぞ、変態賢者!!!」


 ああ、やれやれ、早くこいつをなんとかしないと……



 ん?

 なんだか眠くなってきたな……


 いろいろありすぎて疲れたからかな?


 もう寝るとしようか。


 おやすみなさい。

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