第10話 ステータス屋は責任を持って飼いましょう

 洗面所にやって来た。


 ものすごく今更だが、ここって水道があるんだよな。


 ありがたいなぁ。


「そこの水道から水が出るけど、それで良いのか?」


「出してみて欲しいでアリマス」


 俺は水を出した。


「ふむ、飲めるようでアリマスね」


「見ただけで分かるのか?」


「分かるでアリマス。ダァンサービオさんも飲めるでアリマス」


「えっ、そこまで分かるのか!?」


「分かるでアリマス」


「なんで分かるんだ!?」


「ステータス屋だからでアリマス」


「そ、そうなのか……」


 よく分からんなぁ。



「では、水をむ道具を持って来るであります」


 リテーシカさんが店の裏の方に行った。


「なんでわざわざ裏に回るんだ? 正面のシャッターを開けないのか?」


「あれはただの飾りでアリマス。開かないでアリマス」


「ええ……」


 なんでそんなのあるんだ!?


 意味が分からないぞ!?


 まあ、そんなのどうでもいいか!!



 リテーシカさんが、黒い布で作られているように見える何かを持って来た。


 そして、そこに水をみ始めた。


「あれは何に入れているんだ?」


「アイテムボックストッキングでアリマス」


「えっ!? 今なんて言ったの!?」


 アイテムボックストッキングと聞こえたような気がしたぞ!?


「だから、アイテムボックストッキングでアリマスよ!」


 聞き間違いじゃなかった!?


「なんだよ、それは!?」


「あの中に大量の物品を入れることができるでアリマス」


 なんじゃそりゃぁっ!?


 それってゲームとかに出て来る、アイテムボックスのことなのでは!?


 なんでストッキングと混ざっているんだ!?


 訳が分からないぞ!?



「水をみ終えたであります」


「では、次は食べ物を渡すでアリマス」


「水だけでは教えてくれないのか?」


「ダメでアリマス」


 ケチだなぁ……

 と言いたいところだが、生活が懸かっているようだし、仕方ないか。



 俺たちはダイニングキッチンにやって来た。


 ん?

 キッチンに肝っ玉母さんがいるようだ。


 何をしているのだろうか?


「ああ、ダァンサービオ、ちょうど良いところに来たわね。ちょっと遅いけどお昼にしましょう」


「もう昼飯の時間なんだ」


「何言ってんの? もう一四時よ」


 肝っ玉母さんが上の方を指差しながら、そう言った。


 その方向を見ると、壁にアナログ時計のようなものが取り付けられていた。


 確かに時計の針は、そのくらいの時間を指している。


 あの時計には『1』から『12』までの数字が書かれている。


 ということは、ここの一日も二四時間なのかな?


 まあ、あの時計を見る限りは、そうみたいだな。



「えっ!? ダァンサービオ、あんた、それどうしたの!?」


 肝っ玉母さんがステータス屋を指差しながら、そう言った。


「どうしたって、なんか出て来たんだけど、それがどうかしたのか?」


「ステータス屋は出しちゃダメって言ったでしょ!?」


「えっ!? そうだったのか!?」


「ん? あれ? 言ってなかったっけ?」


「ええと、俺は聞いた覚えがないのだが……」


「そうだっけ?」



「なぜステータス屋を出しちゃダメなんだ?」


「聞いてないの? その子たちの面倒を見なきゃいけないのよ。結構お金がかかるらしいわよ。誰がそのお金を出すの?」


「そういう理由なのか」


 なるほどな。


 今の俺は生活費を考えず、軽々しくペットを拾ってきた子供みたいな感じなのか。



「ステータス屋って、帰ってもらうことはできないのか?」


「ダメよ! ステータス屋を野良にしたら、社会的信用がなくなるわ! 真っ当な生活ができなくなるわよ!」


「ええっ!? そんな大事なのかよっ!?」


「そうよ! その代わり、ステータス屋の面倒をキチンと見ていると、社会的信用が得られるわ」


「そ、そうなんだ……」


 訳が分からなさすぎる……



「それじゃあ、もう面倒を見るしかないわけか?」


「そうよ」


「なら、お金を稼がないと。何か良い方法はないのかな?」


「冒険者になるんでしょ? がんばって稼げるようになりなさい」


「それ、どのくらいの時間がかかるんだ?」


「実力次第だよ。稼げる人は、すぐに稼げるようになると聞いたことがあるわよ」


「そうなのか」


 俺はどうなのかねぇ?



「ほら、サンドイッチができたわよ。食べちゃいなさい」


 肝っ玉母さんから白い皿を受け取った。


 そこには、三角形のサンドイッチが四つ載せられていた。


 これはどうやら二枚の食パンに具材を挟み、半分に切ったものみたいだ。


 具材はトマト、ハム、レタスのようなものと、スクランブルエッグのようなものだ。


「ありがとう」


「それからその子たちには、これを食べさせなさい」


 肝っ玉母さんから、トマト、ハム、レタスのようなもののサンドイッチがひとつ載せられた皿を受け取った。


 このサンドイッチは、肝っ玉母さんの分ではないのだろうか?


「もらって良いの?」


「良いわよ」


「ありがとう」


 肝っ玉母さんは良い人だな。


 見た目は変態そのものだけど。



「アルヴェリュードさん、これをどうぞ」


 俺はサンドイッチを差し出した。


「ありがとうでアリマス」


「できれば、もう少し小さく切ってくれると助かるであります」


「えっ? ああ、そうだな」


 この食パンは、明らかに人間用のサイズだからな。


 俺はサンドイッチを四つに切った。



「この中に入れて欲しいであります」


 リテーシカさんが、アイテムボックストッキングの履き口を広げた状態で、差し出してきた。


「どうやって入れるんだ?」


「この上に置くだけで問題ないであります」


「入るのか? サンドイッチの方が明らかに大きいぞ」


「問題ないであります」


「そうなのか?」


 なら、やってみるか。


 俺はサンドイッチを、アイテムボックストッキングの上に置いた。


 その瞬間、サンドイッチはアイテムボックストッキングに吸い込まれた。


 おおっ、本当に入った!

 アイテムボックストッキング、すごいな!


 名称はひどいけど!!



 さて、これでステータスを教えてもらえるのかな?


 俺のステータスはどうなっているのだろうな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る