第9話 ステータスオープン

「結局どんな装備を買えば良いんだ!?」


 俺は武道の類をいっさいやったことがないから、サッパリ分からないぞ!


身綺麗みぎれい清潔漂白王よ、ステータスを見てはいかがですか?」


 聖女マユメ・アイ・コトリハがそう言った。


「ステータス!? なんだそれは!?」


身綺麗みぎれい清潔漂白王の、現在の情報が記されているプレートのことです。ステータスウィンドウとも呼ばれています」


「そんなのあるのか!?」


「前の世界ではありました」


「そうなんだ。それはどうやって出すんだ?」


「ステータスオープンと言えば出て来るはずです」


「それだけなのか」


 簡単だな。



「なら、やってみるよ。情報提供ありがとう、マユメ」


「どういたしまして」


「では、ステータスオープン!」


 俺がそう言った直後、俺の前に直径三〇センチ程度の白い光の球体が現れた。


 なんだこれ?

 明らかにプレートではないぞ?


 そう思っていると、突然、光がはじけた。


 そして、中から個人商店のミニチュアのようなものが現れた。


 白いコンクリートのようなもので作られている。

 正面には、下ろされた状態のシャッターがある。

 その上に『ステータス屋』と書かれた壁面看板がある。


 このようなミニチュアだ。


 なぜか宙に浮いている。


「ナニコレ!? マユメ、これがステータスウィンドウなのか!?」


「い、いえ、これは違いますよ!?」


「なら、これはなんなんだ!?」


「不明です!」


「誰か知らないか!?」


「不明でございます」


 他のみんなも知らないようだ。



 おや?

 ミニチュアの裏から人型の何かが出て来たぞ。


 ショッキングピンク目出し帽、青いモヒカンのカツラ、白いスーツ、茶色い腹巻、棘付き肩パッド、紺色の前掛けを着用。


 身長一〇センチくらいの男性体型。


 このような姿をしている。


 な、なんだこいつは!?

 見事としか言いようのない、完璧な不審者だな!?


 しかも、なぜか空中を歩いているぞ!?


 なんかいろいろとすごいヤツだな!


「お呼びいただき、誠にありがとうでアリマス! ステータス屋、本日オープンでアリマス!」


 完璧な不審者がそう言った。


「えっ!? どういうこと!?」


「ですから、ステータス屋が今日からオープンしたでアリマスよ!」


 ステータス屋がオープン……


 ステータスオープン!?


 オープンて、ウィンドウを開くではなく、開店するの方だったの!?


 なんじゃそりゃぁっ!?



「あなた、どうしたのでありますか?」

「ぱぱ~、だれかきたのでありゅますか~?」


 また裏から人型の何かが出て来た。


 身長一〇センチくらい。

 シンプルなデザインのベージュのエプロン、ホワイトのスウェット、ブラックのロングパンツを着用。


 金髪碧眼。

 スタイル抜群の美女。


 身長五センチくらい。

 ピンクの園児服を着用。


 金髪碧眼。

 かわいらしい美少女。


 このような姿をしているふたり組だ。


 このふたりも空中を歩いている。


「ええと、家族の方なのかな?」


「その通りでアリマス! そういえば、自己紹介がまだでアリマスね。私は『アルヴェリュード・オヒイェヅール』でアリマス」


 アルヴェリュード!?

 不審者のくせに、カッコイイ名前だな!?


「そして、こちらが妻の『リテーシカ』でアリマス」


 アルヴェリュードさんが、背の高い女性に手のひらを向けてそう言った。


「よろしくであります」


 リテーシカさんがそう言った。


 不審者なのに、あんな美人の妻がいるのか!?


 超勝ち組じゃないか!?


 羨ましすぎる!?


「こちらが娘の『カナッナーノ』でアリマス」


 アルヴェリュードさんが、背の低い女性に手のひらを向けてそう言った。


「は、はじめまして、よろしくでありゅます……」


 カナッナーノさんがそう言った。


 娘さん、かわいいな!


 不審者なのに、なぜあんな幸せそうな家庭を築けるんだ!?


 謎すぎる!?



 おっと、俺も自己紹介をしないとな。


 あっ、だが、なんと名乗るべきなんだ?


 うーん、この姿でいる間はダァンサービオにしておくか。


「俺は……」


「ダァンサービオさんでアリマスよね。存じているでアリマス。よろしくでアリマス」


「えっ!? なぜ知っているんだ!?」


「あなたのステータス屋だからでアリマス」


「どういうこと!? そもそもステータス屋って、なんなんだ!?」


「ステータス屋はステータスオープンと言った方の、ステータスを教えるサービスを行っている店及び職業のことでアリマス」


 なんじゃそりゃぁっ!?


「よって、ダァンサービオさんのステータスは、すべて知っているでアリマス」


「そ、そうなのか……」


 それって俺の個人情報が、全部流出したってことなのでは!?


 大丈夫なのか!?


 確認しないと!?


「俺のステータスを、他人に漏らすようなことはしないよな?」


「当然でアリマス!」


「あ、ああ……」


 不安だけど、信じるしかないか。



「では、さっそく俺のステータスを教えてくれよ」


「そのためには、対価が必要でアリマス」


「えっ、対価? お金か?」


「いいえ、違うでアリマス。そもそも人間のお金をもらっても使い道がないでアリマス」


「なら、何を渡せば良いんだ?」


「基本は食べ物と水でアリマス。時々、衣服の素材や建材などを要求するでアリマス」


 物品払いなのか。


「それを要求するのは、やはり生活のためなのか?」


「その通りでアリマス。私たちも生きているでアリマス」


「そ、そうなのか……」


 奇妙な生物だなぁ。



「というわけで、ステータスを知りたいなら、食べ物と水を渡すでアリマス」


「分かったよ」


 何か探してみようか。


 俺は部屋を出た。



 ん?

 なぜかステータス屋の面々が付いて来ているぞ。


 しかも、建物まで付いて来ている。


「なんで付いて来るんだ?」


「ステータス屋は、ステータスオープンと言った方に付いて行くものでアリマス」


「へぇ、そういうものなのか」


 あれ?

 そういえば、肝っ玉母さんにはステータス屋はいなかったな。


 なんでだろう?


 今度聞いてみようかな。

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