第4話 窓から城壁が見える家
俺が寝ていた部屋に戻って来た。
食事を取って、落ち着いたし、現状について考えてみようか。
それにしても、なんかこの部屋、暗いなぁ。
あっ、そういえば、カーテンが閉じたままだったな。
開けようか。
俺はカーテンを開けた。
そこには、日本によくある左右に引いて開閉するタイプの窓があった。
おおっ、室内が明るくなったな!
ん?
遠くの方に、大きな壁が見えるぞ。
まるで西洋の城にある城壁みたいだな。
あれはなんだ?
まさか本当に城壁なのか?
あれ?
町の様子もおかしいな。
瓦屋根の日本風の建物もあれば、レンガ、石、コンクリートと思われるもので建てられている西洋風の建物もある。
えっ!?
ナニアレ!?
キノコっぽい家まであるぞ!?
なんでこんなに建築様式がバラバラなんだ!?
訳が分からんぞ!?
やはり俺は異世界に来てしまったのか!?
おっと、慌ててはいけない。
いったん深呼吸をして、落ち着こう。
ひっひっふー……
よし、落ち着いた。
では、現状について考えてみよう。
俺はベッドに座った。
ええと、俺は
今日、目が覚めたら、なぜか周囲の者たちから、ダァンサービオと呼ばれるようになっていて、体が十代前半くらいの美少年になっていたと。
周囲には、なぜか俺が昔作った世界の設定が反映されているものが多数ある。
この部屋の家具のように、日本で普通に手に入るようなものも多数ある。
肝っ玉母さん、お金、外の建物のように訳の分からんものもある。
現状はこんな感じだな。
なんだこれは!?
訳が分からんな!?
なんでこんなことになってしまったんだ!?
そういえば、昨日は何をしてたっけ?
あっ、そうだ!
昨日は休日だったから、朝から酒を飲んだんだっけ。
で、酒を飲んで……
そのあとは…… そのあとは……
ん?
思い出せないな……
ということは、もしかして、俺は泥酔中で、夢を見ているのか?
もう一回、頬をつねってみようか。
うん、やはり痛いだけだな。
ここは現実みたいだな。
そういえば、ダァンサービオの方は昨日何をしていたのだろうか?
うーん、思い出せないな。
みんなに聞いてみようか。
「ゼダジカ、俺って昨日何をしていたっけ?」
「不明でございます」
「えっ? 覚えていないのか?」
「ええ、実はわたしも記憶が混乱しているようでございまして」
「そうだったのか」
他のみんなにも聞いてみた。
全員記憶が混乱していて、昨日のことを覚えていないそうだ。
なら、肝っ玉母さんに聞いてみようか。
ダイニングキッチンにやって来た。
肝っ玉母さんは皿を洗っているようだ。
「ちょっと良いかな? 俺は昨日何をやっていたか知っているかな?」
「えぇっ? そんなの覚えてないわよ!」
「昨日の朝は、何を食べたっけ?」
「え? ええと、忘れちゃったわ」
「じゃあ、夕飯は?」
「うーん、それも忘れちゃったわね」
何にも覚えていないんだな。
「あっ、そうだ。俺って、何歳だっけ?」
「はぁっ!? 何を寝ぼけているの!? 一二歳になったから学校に行けるんでしょ!?」
「そ、そうだよな。いろいろありがとう」
俺はその場を立ち去った。
ナニコレ……
みんな昨日のことを覚えていないみたいだぞ……
どういうこと?
ちょっと怖いんだけど……
部屋に戻って来た。
そして、ベッドに座った。
さて、あとは何を考えようか?
これからのことかな?
とりあえず、目標は元に戻ることにしよう。
そして、戻れなかった時のために、この世界でも生活できるようにしておいた方が良いだろう。
そのために今やるべきことは、情報収集だよな。
そういえば、この家には情報端末の類はないのかな?
探してみようか。
おや?
机の上に何かあるぞ。
これは学校のパンフレットかな?
表紙には、三人の若い女性の写真も載っている。
そして『ゴクフツウノタダノ学校』と書いてある。
ごく普通のただの学校?
なんかやる気のない名前の学校だなぁ。
まあ、そんなのどうでもいいか。
これはあとで読むことにして、探索を続けようか。
……見つからないなぁ。
この家にはないのかな?
それとも、この世界にそういうものはないのだろうか?
どうなんだろうな?
さて、どうするか?
とりあえず、パンフレットを見てみるか。
えっ!?
ゴクフツウノタダノ学校というのは略称で、正式には『ゴケビムヂンクジイロ・クエアウセフサザナズ・フドタユクハァサブケ・ツデアバヴビオゴグナ・ウユエヨエビビフミビ・ノウレマウゾダイサゾ・タカマッパヘハルヨシ・ダダノムカアオトエル・ノクデヨワネイヤヂク盗賊勇者賢者魔法使い聖女冒険者学校』というのか!?
なんだそれは!?
名前が長すぎるだろ!?
これを考えたヤツは、バカなんじゃないか!?
もう、この時点で行きたくなくなってきたぞ!?
なぜダァンサービオは、ここに行きたかったのだろうか!?
訳が分からないなぁ。
まあ、とりあえず、続きを読んでみるか。
『この学校は、盗賊、勇者、賢者、魔法使い、聖女、冒険者を育てる環境を用意している学校です』と書いてある。
盗賊を育てているのか!?
なんじゃそりゃぁっ!?
『この学校は、料金を払えば誰でも入学できます。百万アカヂィで、一年間在籍できます』と書いてある。
ほう、そうなんだ。
そういえば、お金は誰が、いくら払ったのだろうか?
肝っ玉母さんかお父さんなのかな?
確認しておこう。
『この学校に試験や課題はいっさいありません。講義は自由に出席してもらって構いません。学校の設備は自由に使えます』と書いてある。
なんか緩い学校だなぁ。
生徒の自主性に任せる学校なのかな?
『用がなくなったら、自由に卒業してもらって構いません』と書いてある。
本当に緩いな。
入学日は『ランブベービ歴二〇三一年四月八日』だそうだ。
これはいつなんだ!?
そもそもここの暦は、どうなっているんだ!?
それも調べなくては!
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