第2話 マンション俺?

 聞き取りを終えた。


 まとめると、俺の体には……


 右足の膝の裏側あたりに『炎の精霊レシィン・ムーナムイト』

 左足の膝の裏側あたりに『風の精霊リヌーシ・ベムネソゾ』

 左足の太ももに『土の精霊ギーンテ・ロアセタ』


 左手の薬指に『堕天使メートナ・ゲシビード』

 右手の小指に『賢者レーロナネ・ウーマヒグ』


 左手の小指に『悪魔トーネベワ・ガコホゲス』

 左足の小指に『魔物ユブイエインラギ』


 左の腎臓に『魔王ドーパギ・ジィゼダー』

 右の腎臓に『大魔王ダオワベーヴォ・ベルズ』

 大腸に『超大魔王ゼゾカードピド・ハイエーマ』


 左手の甲に『妖怪ミィヨアキダイン』

 左手の肘に『あやかしバリダゴヘルイ』

 左手の二の腕に『ものドアロモクーソヲ』


 尻に『妖魔ジローゲヨ・ギャケーエ』

 右胸に『付喪神セームハ・エヒツ』

 左胸に『悪霊グジヌ・ウイエイ』


 鼻に『将軍レダアリソス・イリゼ』

 左足の親指に『忍者ヤジエイ・ズチイセ』

 右脇の下に『暗殺者クカキシ・ネキヤ』


 右目に『大魔法使いレシンテ・ソノボアル』

 心臓に『魔女ガネモヨ・クダモ』

 へそに『聖女マユメ・アイ・コトリハ』


 左手の親指に『聖龍セヒソヒ・テヒノーイ』

 右手の親指に『魔龍マドリオヤ・レヲロンゴ』


 右耳たぶに『神獣メィフリー・ホツマァ』

 左耳たぶに『霊獣ユーセンアテ・ユクシル』


 それと、左目に『魔人ゼドツベスドーザ』

 右手の甲に『邪神イネターゼヲーエギ』


 右足の太ももに『水の精霊ユオクユープヨ』

 右の肋骨ろっこつの上から三番目に『天使ゼダジカ・カカツーヴ』


 が封印されているそうだ。


 合計三〇体もいるのかぁ。


 わぁ、すごいなぁ。

 いっぱいいるなぁ。

 にぎやかで楽しそうだなぁ。


 って、なぁんじゃぁそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?


 ふざけんじゃねぇぞっ!?


 なんでこんな状況になっているんだよ!?


 もしかして、俺が悪いのか!?


 俺がこんなのを考えたから、こんな目に遭っているのか!?


 いや、そんなまさかな……


 設定を考えただけで、こんな訳の分からないことにはならないよな……


 あっ!

 もしかして、これは夢なんじゃないか!?


 そうかもしれないな!!


 うん、きっと、そうだ!!


 ちょっと頬をつねってみようか!


 ……痛いだけでしたぁぁぁっ!!!


 残念ながら、夢ではないようだ……



「どうしたのでございますか、神聖なるモチョモチョ筋肉?」


 天使ゼダジカ・カカツーヴが話しかけてきた。


「おい、こら、なんでその肩書きの方で呼ぶんだよっ!?」


「名誉あることなのだから、当然でしょうでございます」


「そうだったのか!?」


 そんな訳の分からんものなのに!?


「できれば名前の方で呼んで欲しいのだが……」


「ダメでございます」


「ええ……」


 なんでだよ!?


 ああっ、もうそんな細かいこと、どうでもいいや!!



「それで、どうかしたのでございますか?」


「いや、なんでこんな状態になっているのかと思ってな」


「まったくでございますね。いつの間に、こんなに封印していたのでございますか?」


「そこがまったく分からないんだよ」


「そうでございますか。そういう時は無理をしない方が良いでございますよ。先程の方の言う通り、顔を洗って、食事を取るべきなのではでございます」


 肝っ玉母さんの言う通りか。


 それはそれで大丈夫なのかな?

 俺が食べられる食事なのだろうか?


 まあ、とりあえず、行ってみるか。


「ああ、そうしてみるよ。ありがとう、ええと……」


「わたしのことは『ゼダジカ』と呼び捨てにしてもらって構わないでございますよ」


「分かったよ」


「我も呼び捨てで良いのである」

「わっしも構わんじゃしー」

「わたくしも呼び捨てで良いですよ」


 他のみんなも呼び捨てで良いみたいだな。



「待つのでアール! 余のことは『魔王ドーパギ・ジィゼダー様様様』と呼ぶのでアール!」


「大魔王としては『大魔王ダオワベーヴォ・ベルズ様様様様様』が良いぞ」


「超大魔王的には『超大魔王ゼゾカードピド・ハイエーマ様様様様様様様』と呼ばれたい気分かな」


 と思ったら、違うのがいやがったぞ!?


「なんだそれは!? 『様』が多すぎるだろ!? 長すぎるから却下だ! 呼び捨てに決定な!」


「な、なんだと、人間の分際で生意気でアール! 魔王に敬意を払うのでアール!!」


「却下!」


「お、おのれ、清酒魔王転がしの勇者めでアール!」


「はぁっ!? なんだそれは!?」


「なんと愚かな、この称号まで忘れてしまったのでアールか!?」


「あ、ああ……」


 そんなのあったっけ?


 思い出せないな。


 この手の設定は、大量に作ったからなぁ。



「遊んでねぇで、さっさと顔を洗ったらどうダ? 超究極激辛炎の勇士さんヨォ」


 炎の精霊レシィン・ムーナムイトがそう言った。


「超究極激辛炎の勇士!?」


「お前さんの称号ダ。さっさと思い出せヨ」


「あ、ああ……」


 なんで肩書きには、妙なものが多いんだ?


 意味が分からんなぁ。



 では、行くとするか。


 洗面所はどこにあるのだろうな?


 とりあえず、ここを出るか。


 俺はベッドから下りた。


 ん?

 ちょっと体に違和感があるような……


 それに視線が低いような……


 まあ、いいか。


 さっさと行こう。



 俺は部屋を出た。


 ここは廊下のようだ。

 やはり見覚えのない場所だな。


 ここはどこなのだろう?


 まあ、それはあとで良いか。


 今は洗面所を探そう。



 俺はこの場所を探索してみた。


 ここにあるのは、俺の寝ていた部屋、他の誰かが使っていると思われる部屋が二か所、物置と思われる部屋、下り階段のようだ。


 ここは二階みたいだな。


 では、下に行ってみようか。



 一階にやって来た。


 さて、洗面所を探そうか。


 俺は適当に目に付いた片開きのドアを開けた。


 ここはトイレか。

 ごく普通の白い洋式トイレだな。


 ついでに用を足しておこうか。


 あれ?

 息子さんの様子がおかしいぞ……


 というか、体全体がいつもと違うような……


 まあ、とりあえず、さっさとしてしまおうか。



 よし、洗面所探しを再開しようか。


 俺は適当に廊下を進んでみた。


 おっ、洗面所を発見したぞ!


 鏡付きの洗面台、ドラム式洗濯機のようなものが置いてある。


 隣に風呂があるみたいだ。


 では、顔を洗うか。


 おっと、その前に手を洗わないとな!



 俺は洗面台の前にやって来た。


 ん?

 鏡に見慣れない美少年が映っているぞ!?


 銀髪の碧眼へきがんで、整った顔立ちをしている。


 肌が白くてツヤツヤで、すごくキレイだ。


 ただ、ちょっと冷たいような印象を受ける気もする。


 誰だ、お前は!?


 まさか俺なのか!?


 そんなバカな!?


 俺は三五歳のおっさんで、黒髪黒目の生粋の日本人のはずだぞ!?


 これはどういうことなんだ!?


 もしかして、俺は転生してしまったのか!?

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